がんと無縁でいるために

予防可能ながん 経済負担1兆円

 国立がん研究センターなどは1日、がんによる経済負担の推計を発表した。2015年時点の経済負担は約2兆8579億円で、そのうち予防可能ながんによる経済負担は約1兆240億円だった。ヘリコバクターピロリ菌の感染による胃がんや、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がんなどの経済負担が大きかった。

 がんは1981年以降、国内の死因第1位で、年間約100万人が罹患し約38万人が死亡している。多くのがんは生活習慣や環境要因によって引き起こされていて、適切な対策で予防できる場合も多い。

 2015年時点でがんと報告された患者について、がんの治療にかかる医療費の負担と、死亡や治療のため就労できなくなる労働損失から、経済負担を推計した。喫煙や飲酒、感染などの要因とがんの関連性をまとめ、予防できる要因ごとに経済負担を推定した。

 感染による経済負担が最も大きく約4788億円だった。ピロリ菌の感染が原因の一つである胃がんは約2110億円、HPVの感染による子宮頸がんは約640億円だった。ピロリ菌の除去は胃がんの発症予防につながる。HPVワクチンの接種は感染に予防効果があり、2022年から積極的推奨が再開された。研究チームの国立国際医療研究センターの齋藤英子上級研究員は「経済的にもがん対策は意味があると示せた」と話す。

 就労できなくなる労働損失が最も大きかったがんは、男性が肺がんで約921億円、女性が乳がんで約2326億円だった。齋藤氏は「乳がんは働き盛りの世代で罹患する人が多く、労働損失が大きい」と指摘する。

2023年8月2日 日本経済新聞より

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染による胃がんを克服した話はこちら(田辺裕一さんの場合)
ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がんを回避した話はこちら(高橋美里さんの場合)

N.M.I.
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