研究・論文

1983年 日本薬学会東北支部大会(岩手医科大学)にて『サナギタケ、コナサナギタケの培養と その抗腫瘍成分について』を発表

1983(昭58)年・日本薬学会東北支部大会(岩手大学医学部)

 わが国に生える冬虫夏草(Cordyceps)のうち、サナギタケ(Cordyceps militaria Link.)、コナサナギタケ(Cordyceps sp)isaria typeについて成分の検索を行った。サナギタケについては比較的採集可能な天然採集のサナギタケ菌と人工培養菌を、コナサナギタケについては希有の種であるため人工培養菌を成分検索の対象とした。

 サナギタケ、コナサナギタケは蛾の幼虫に寄生するバッカクキン科(Clavicipitales)に属するが、古来、中国の漢方で伝承されてきた冬虫夏草(Cordyceps sinensis Sacc,)と種を異にし、今まで抗腫瘍成分の検索はなされていなかった。これまで人工培養菌のエタノール抽出の粗結晶を得、これを抗腫瘍性、検討の資料としてきたが、自然界では成分構造決定のための資料が希少なため、人工培養菌の増殖に期待するより他に方法がなかった。

 人工培養には固型培地と液体培地を使用したが、より純粋に夾雑物のない菌体を得るため、液体培養法を採用し菌座形成を促進させるため60日間の静地培養を行い菌体の増殖を計った。エタノール抽出エキス検索の結果、steroid骨格を有する Ergosterol peroxideとTriglycerideを得、glycerideが抗腫瘍性に関係しないことからErgosterol peroxideが抗腫瘍活性の本態であると推察する。

 1983年、東北大学の近藤嘉和先生が、日本冬虫夏草のうち、サナギタケとコナサナギタケに、抗腫瘍性のあるエルゴステロールパーオキサイドが含有されていることを(世界で)初めて発見した。その後1997年、同大学院生小坂良氏により、ハナサナギタケにもエルゴステロールパーオキサイドが含有されていることがつきとめられた。

N.M.I.
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