研究・論文

2009年10月 玄米培地で産生した冬虫夏草属 コナサナギタケ とツクツクボウシタケの抗腫瘍効果について

2009年10月4日 日本生薬学会第56回年会(京都市 京都薬科大学)
(NMI自然薬食微生物研究所)矢萩信夫、矢萩禮美子
(東北薬大)菅野秀一、石川正明

【目的】
冬虫夏草属菌は、滋養強壮あるいは免疫調整物質として珍重されている。演者らは冬虫夏草属菌 Isaria japonica Yasuda(ハナサナギタケ)培養液が、Sacoma180(S-180)癌細胞に対する増殖抑制効果、細胞性免疫応答増強作用あるいは消化管免疫において制がん剤 5-FU 投与により低下した免疫応答を増強することを報告している [Int.Immunopharmacol.,5, 903-916(2005);日本薬学会第125年会(2005);日本薬学学126年会(2006)]。新たに玄米培地で産生した種々の冬虫夏草属菌の抗腫瘍効果について検討したので報告する。

【方法】
実験動物:4週令のddy系雄性マウスはSLC(日本エスエルシー、静岡)から購入して使用した。試料は、自由摂取させた(1匹のマウスは、およそ 5g/1日摂取)。抗腫瘍活性:1群10匹のマウスに、S-180 癌細胞(1×106個)を皮下接種した。癌細胞を接種して18日後に腫瘍重量を測定した。各群ごとに平均腫瘍重量を求め同時に実施した対照の玄米粉末投与群の平均腫瘍重量との比較から抗腫瘍作用を算出した。NK活性:1群6匹のマウスを使用し、所定の時間に脾臓細胞を採取した。YAC-1細胞は10%FCS添加RPMI培養液で調整した。3H-Uridine で標識したYAC-1細胞(2×105/ml)に対して10倍、20倍、50倍あるいは100倍の脾臓細胞を接触させ5% CO2、37degcで培養した。対照群(Native)として未処置群の脾臓細胞を使用した。脾臓細胞未添加との比較によりNK活性を算出した。

【結果・考察】
マウスにS-180癌細胞を接種して24時間後から18種類の冬虫夏草属菌あるいは複合した冬虫夏草属菌を摂取させた時、Isaria farinosa(コナサナギタケ)(抑制率61.6%)と Isaria sinclairii(ツクツクボウシタケ)(抑制率53.4%)で最も強い細胞増殖抑制作用が観察された。NK活性に及ぼす影響について検討した。 YAC-1細胞と10倍、20倍、50倍あるいは100倍未処置脾臓細胞との接触により、ほぼ細胞比の増大に依存しNK活性の増大が認められた。YAC- 1細胞と20倍の脾臓細胞との接触させた時、コナサナギタケあるいはツクツクボウシタケを5、10あるいは15日摂取ではNK活性の増大が認められた。玄米培地で培養したコナサナギタケあるいはツクツクボウシタケにおける抗腫瘍効果は、免疫調整作用に起因することが示唆された。

※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。

N.M.I.
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