研究・論文

2008年9月 日本冬虫夏草のミジンイモムシタケ、マルミノアリタケ、ウスキサナギタケ、サナギタケ培養液の抗腫瘍効果

2008年(平20)9月19日〜20日・日本生薬学会第55回年会(長崎)

【緒言】
冬虫夏草属菌は、滋養強壮あるいは免疫調整物質として珍重される。 演者らは虫草属菌Isaria japonica Yasuda(ハナサナギタケ)培養液が、Sarcoma180(S-180)癌細胞に対する増殖抑制効果、細胞性免疫応答を選択的に増強することを報告している。[Int.Immunpharmacol.,5,903-916(2005);日本薬学会第125年会(2005);日本薬学会第126年会(2006)]。新たに作製した冬虫夏草属菌Cordyceps sp.nov.(ミジンイモムシタケ)、Cordyceps formicarum Y.Kobayasi(マルミノアリタケ)、Cordyceps takaomontana Yakushiji(ウスキサナギタケ)、およびCordyceps militalis(Vuill)Fr.(サナギタケ)培養液凍結乾燥品の抗腫瘍効果について検討した。

【方法】
S-180癌細胞に対する抗腫瘍効果は、ddY系雄性マウスにS-180細胞、あるいはEL-4癌細胞に対する抗腫瘍効果は、C57BL系雄性マウスに皮下(固形癌)または腹腔内(腹水癌)に106個を接種した。試料は癌細胞を接種して、24時間後から1日1回10日間経口投与した。固形癌は18日後に腫瘍重量、腹水癌は55日間の生存率を測定し、癌細胞のみを接種した対照群と比較した。マクロファージ細胞の活性化作用は、J774.1あるいはRAW264.4細胞と24時間培養してTNF-αはエルザ法、一酸化窒素(NO)は比色法で測定した。

【結果・考察】
S-180固形癌に対して、Cordyceps sp.nov.(Fig.1)、Cordyceps formicarum Y.Kobayasi(Fig.2)、Cordyceps takaomontana Yakushiji(Fig.3)、およびCordyceps militalis(Vuill)Fr.(Fig.4)培養液凍結乾燥品(10、30、50あるいは100mg/kg)は、用量に依存した細胞増殖抑制作用が観察された。腹水癌に対しては、観察されなかった。J744.1細胞に対してCordyceps militalis(Vuill)Fr.は、用量(0.1、1、10、100μg/mL)に依存したTNF- α産生が観察された(Fig.5)。

Cordyceps militalis(Vuill)Fr.はEL-4固形癌に対しても、ほぼ用量に依存した細胞増殖抑制作用が観察されたが(Fig.6)、腹水癌に対しては、観察されなかった(Fig.7)。  RAW264.7細胞において、いずれの冬虫夏草属菌(0.1、1、10、100μg/mL)もNO産生作用が認められた(Fig.8)。

以上のことから、今回作製した冬虫夏草属菌培養液凍結乾燥品は、いずれもIsaria japonica Yasudaと同様にマクロファージを活性することにより、抗腫瘍作用を示すことが示唆された。

※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。

N.M.I.
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