研究・論文

2006年3月 ハナサナギタケ培養液の抗腫瘍効果(2)

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2006年(平18)3月28日〜30日・日本薬学会第126年会(仙台)


【目的】虫草菌の一種であるハナサナギタケ(Isaria Japonica Yasuda)は、滋養あるいは免疫調整作用を有する。矢萩らによりハナサナギタケ培養液が、細胞性免疫応答を増強すること、消化管免疫において制がん剤 5-フルオロウラシル(5-FU)で低下した免疫応答を選択的に増強することが報告されている。本研究では、ハナサナギタケ培養液凍結乾燥品(IJCE)の担癌モデルマウスに対する抗腫瘍効果について検討した。

【方法】4週齢のddy系雄性マウスにSarcoma180(S-180)あるいはEhrlich癌細胞、C57/BL6JマウスにEL-4細胞を皮下に 106個を接種し、24時間後から1日1回10日間[IJCE(p.o)、 5-FU(i.p.)、MMC(i.p.)IJCE+5-FU、IJCE+MMC]投与した。18日後に腫瘍重量を測定し、癌細胞のみを投与した対照群と腫瘍重量の平均値を比較した。一酸化窒素(NO)は比色法、TNFαはELISA法により測定した。

【結果および考察】いずれの癌細胞に対しても、IJCE(10、30,50,100 mg/kg)単独投与でほぼ用量依存的な抗腫瘍効果が観察された。S-180抗腫瘍細胞群ではIJCE(30 mg/kg)とMMC(0.5 mg/kg)あるいは5-FU(10 mg/kg)を併用するとMMC、5-FU単独郡よりも抗腫瘍効果の増大が認められた。マウスのマクロファージ細胞(J774.1)にIJCE(1、 10,100 μg/mL)を添加して4時間培養した時、TNFαの産生が用量依存的に観察された。さらに、J744.1細胞とIJCEを24時間培養した時には、NOの産生が用量依存的に観察された。 S-180担癌マウスにIJCE(10mg/kg、i.v.)投与した時、血清、肺、腫瘍、肝臓、脾臓にTNFα の産生が観察された。 以上の事から、IJCE(ハナサナギタケ培養液凍結乾燥品)はマクロファージを活性化することにより抗腫瘍作用あるいは制癌薬5-FUとMMCの抗腫瘍作用を増強することが明らかになった。

※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。

N.M.I.
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