研究・論文

2005年3月 ハナサナギタケ培養液の抗腫瘍効果

2005(平17)3月29日〜31日・日本薬学会第125年会(東京)

【目的】:我々はこれまでに、虫草菌の一種であるハナサナギタケ(Isaria japonica Yasuda)培養液が、細胞性免疫を増強することを明らかにしてきた。本研究ではハナサナギタケ培養液凍結乾燥品(IJCE)の担癌モデルマウスに対する抗腫瘍効果について検討したので報告する。

【方法】:4週齢のddY系雄性マウスを使用した。1)背部皮下にSarcoma180(S-180)癌細胞106個を接種した。癌接種と同時に0.1%あるいは0.2%の濃度でIJCE含有粉末試料を18日間投与した。18日目に粉末試料のみを投与した対照群と腫瘍重量の平均値を比較した。2)腹腔内にS-180癌細胞106個を接種した。24時間後から1日1回5日間検体[IJCE、5-FU、MMC(マイトマイシンC)、IJCE+5FU、IJCE+MMC}を腹腔内に投与した。55日間マウスの死亡の有無を観察し、癌細胞のみを投与した対照群と生存日数の平均値を比較した。一酸化窒素(NO)は比色法、TNFαは ELISA法、NOとTNFαのmRNAはRT-PCR法により測定した。

【結果及び考察】:S-180固形腫瘍の増殖に対して、0.1%あるいは0.2%IJCE混餌投与により、59および60%の抑制作用を示した。腹水型腫瘍の生存日数に対して、IJCE(10mg/kg)単独投与では対照群に比較して軽微の延長(1.12倍)が観察されたが、IJCE(3mg/kg)と MMC(0.5mg/kg)を併用するとMMC単独郡(1.32倍)よりも、生存日数の延長(1.65%)が認められた。

マウスのマクロファージ細胞(J774.1)にIJCE(1,10,100 μg/ml)を添加して4時間培養した時、TNFαの産生が用量依存的に観察された。さらに、J774.1細胞とIJCEを時間培養した時には、TNFα とN0のmRNAの発現が観察された。S-180担癌マウスにIJCE(10mg/kg,i.v.)投与した時、血清、肺、腫瘍、肝臓、脾臓にTNFαの産生が観察された。

以上の事から、IJCE(ハナサナギタケ培養液)はマクロファージを活性化することにより制癌薬5-FUとMMCの抗腫瘍作用を増強することが明らかとなった。

※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。

N.M.I.
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