研究・論文

2003年3月 ハナサナギタケ培養液の消化管免疫応答に及ぼす影響

2003(平15)3月27日〜29日・日本薬学会第123年会(長崎市)

【目的】 消化管免疫応答は、消化管における局所的な免疫応答のみならず、全身の免疫反応に深く関与していることが明らかとなってきた。先に本研究所では、虫草菌の一種であるハナサナギタケ(Isaria Japonoca Yasuda)の培養液には、T細胞依存型の免疫応答を経口投与により増強させ、制癌剤の5-fluorouracil(5-FU)投与による免疫応答の低下を回復させる効果 があることを明らかにした。

本研究ではハナサナギタケ培養液の凍結乾燥品(IJCF)の消化管免疫応答に及ぼす影響を調べるため、IFCFを経口投与したマウスの小腸からパイエル板を採取し、そのリンパ球ポピュレーションを解析し、サイトカイン産生量 を調べた。

【方法】5-FU(150mg/kg)を投与したC57BL/6マウスにIJCFを経口投与し、常法にしたがってパイエル板リンパ球を分離して、細胞をT(CD3)、B(CD19)及びT細胞サブセット(CD4及びCD8) のFITC標識抗体で染色した。ついで、これらの陽性細胞のポピュレーションをフローサイトメーターで解析した。さらに、バイエル板リンパ球を24ウエルプレートで培養し、細胞をIJCFの存在下にCon-A(5μ g/ml)刺激し、経時的に培養液を採取して培養液上清中のIL-2、IL-4、IL-6及びIFN-γの産生量 をELISA法で検出した。

【結果・考察】50mg/kg/day(6日間)の用量 のIJCFは、5-FUによるバイエル板細胞数の減少を抑制し、T細胞サブセットのCD4+細胞の割合を増加させた 。また、IJCFはパイエル板細胞のIL-2とIFN-γの産生を増加させた。なお、IJCFはIL-4の産生には影響を及ぼさなかった。したがって、IJCF(ハナサナギタケ培養液)には5-FUよって低下したTリンパ球サブセットのうちCD4+細胞を回復させ、またTh1による免疫応答を選択的に増強させる作用があることが明らかとなった。

※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。

N.M.I.
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