紀行・分類図鑑

冬虫夏草 ウスイロセミタケ

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発生地:山形県・今神
採集年月日:Aug.30,1980
同翅亜目Homoptera。セミ科Cicadidaeエゾハルゼ ミの幼虫に寄生する虫草菌である。

半翅目のエゾハルゼミに寄生する虫草菌にはエゾハルゼミタケC.longissima Kobayashiがあり、類似のセミタケにオリーブ色を呈したウメムラセミタケC.paradoxa Kobayashiなどがある。

本種は1980年の夏、最上川船下りで有名な古口町を流れる最上川の支流、角川の奥地、秘境温泉といわれる今神温泉の山地渓流で発見された。冬期間は雪 のため閉鎖され、近くに神秘を湛えたお池がブナの原生林の中に静かなたたずまいをつくっている。

子実体は単一、棍棒状で長さ90mm、柄部は30mm、円柱形で太さは約1.5〜2.0mmになり、平滑、皮膚を欠く。頂部は長楕円形、淡黄褐色。子嚢 殻peritheciumは埋生で卵形450-550×250-275μ、口縁を僅かに突出する。まれに子嚢殻の細口瓶形も認められる。子嚢ascusの太さ7μ、頭部の径4μ。2次胞子sec-sporeは3-4×1.5μで短冊状に両端が裁断される。

ブナ林内の沢地にヒノキアスナロ(青森ヒバ)の大木があり、その根元で採取された。当初、同地域では1個体のみの発見であり、新種としては同定されなかった。後に冬虫夏草の第一人者、清水大典、小林義雄両先生の鑑定により新種として登録された。発生は稀。日本特産。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.33 No.6より

N.M.I.
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