紀行・分類図鑑

冬虫夏草 イリオモテセミタケ

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発生地:西表島
採集年月日:Aug.10,1977
同翅亜目Homoptera。セミ科Cicadidaeの幼虫に寄生する虫草で、八重山群島の最南端に位置する西表島の亜熱帯雨林内に発生する。

世界で350種に及ぶ虫草の中で、セミに寄生する虫草ほど、宿主である虫体と子実体であるキノコとが渾然一体となり、調和のとれた自然の造形美を作り出しているものは他に類例を見ない。虫草の中で虫として地中にあり、夏に草と化して地上に姿を現す最も代表的な虫草属菌の一つといっても過言ではない。

子実体stromaは1個、セミ幼虫の頭部より生じ、円柱形、長さ8mm、やや硬い肉質、頂部に赤褐色の胞子果叢を形成し、柄の基部は革質で淡褐色で、捩れる。胞子果peritheciumは埋生型で、僅かに突出、長楕円形で粒点状に密布する。大きさ470-500×170-270μ、子嚢ascisの太さ4μ、子のう頭部の径3μ、2次胞子8-11×1μ。

N.M.I.による人工培養成功。

本菌の不完全型Isariaに分生胞子Conidiosporeで世代を繰り返すイリオモテハナゼミタケ(西表島産)がある。

註:写真はイリオモテセミタケの採集現場写真。地下部の宿主であるセミを掘り起こしたもので、セミ虫体の足の部分から綿毛状の菌糸体が観察される。

感染症 VOL.29 No.3より

N.M.I.
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