紀行・分類図鑑
冬虫夏草 カイガラムシツブタケ
カイガラムシツブタケ
Cordyceps coccidiicola Y.kobayashi et D.Shimizu
発生地:山形県最上郡釜淵
採集年月日:Aug.24,1975
同翅亜目Homoptera、カイガラムシ科Coccidaeの昆虫に感染、寄生する虫草菌で、丸味のある比較的大きめのカイガラムシである宿主に子実体を発生させる。
本種はカイガラムシに寄生する虫草としては最も基本的な種類で、1969年、山形県川西町玉庭にて初めて見出されて以来、ハリガタカイガラムシタケCordyceps sp.、サキブトカイガラムシタケC.yahagiana Kobayashi et Shimizu、イリオモテカイガラムシタケKobayashi et Shimizu などのカイガラムシなどに寄生する虫草が日本国内で発見されている。
小さい寄生型の虫草で湿度の高い渓谷、流畔のタニウツギ、オオカメノキ、トチノキ、エゾアジサイの枝幹に着床し発生する。
子実体は高さ3〜6mm、3〜10本を叢生、角状で肉質、上部に淡桃灰色の結実部をつくり、基部は白色、平滑で、太さ0.7〜1.5mmになる。結実部は淡褐色の半埋生型で、子嚢殻peritheciumの先端を粒点状に密布させる。子嚢殻は卵形で、大きさ250-270×150-160μ。
子嚢ascocarpiumは130-150×8.5-10μ、子嚢胞子ascosporeは細長い糸状で75-95×3-3.5μ、二次胞子sec- sporeには分裂しない。
日本特産。
N.M.I.による人工培養成功。
〔追記〕外国産にカイガラムシタケC.clavulata(Sch.)Ellis が知られており、子実体は極めて小さく高さ1-2.2mm、結実部はバチ型のタンポ状、色は淡い暗紫褐色の肉質で、明らかに本種とは形態を別にする。北ア メリカ、ヨーロッパ産。
感染症 VOL.32 No.2より