紀行・分類図鑑

冬虫夏草 トビシマセミタケ

冬虫夏草 トビシマセミタケ.jpg

トビシマセミタケ
Cordyceps ramosopulvinata Y.Kobayashi et D.Shimizu

発生地:山形県・鶴岡
採集年月日:july.30,1981

半翅目Hemiptera。セミ科Cicadidaeの幼虫 に寄生する虫草で、宿主となるセミにはヒグラシ、アブラゼミ、ミンミンゼミなどがある。

半翅目のセミに寄生する類似の虫草菌には、他に西表島で採集されたカンザシセミタケC.kanzashiana、 ヒメハルゼミタケC.polycephalaが近似種として知られている。

本種は1980年の夏、日本海は山形県沖の飛島にて、採集の第一人者・渡辺正一氏によって初めて発見された虫草菌で、トビシマセミタケと命名された。

飛島は対馬暖流が流れ、温帯性の植物が多く、飛島独自の生態系をつくっている。ことに北限とするクスノキ科タブノキの原生林が海岸の岸壁に繁茂し、海流の湿度と調和してトビシマセミタケの発生に少なからぬ影響を与えている。

子実体stromataの柄の長さ2.0〜9.5cmになり、太さは約1.0〜2.0mm、頂部は枝分かれして、首折れ型の結実部をつくる。球状か楕円状に結実し、ときに突き抜き型に先端をわずかに表す。柄の色は黄白色か淡黄土色、弾力性ある革質でかたい。

子のう殻peritheciumは洋梨形で半埋性、結実部に密布する。大きさ750-925×275-300μ、子のうascusの太さ3.5-5μ、 頭部の径3-5μ、二次胞子sec.sporeは3×1μで、短冊状に両端が裁断される。

当初、山形県庄内地方を中心に発見されたが、日本海沿岸を南下して全国的に発見されるようになった。発生は希、日本特産。

越年生でホストである虫体にカロリーが残っていると、越年して翌年に旧子実体から枝分かれして新しい結実部をつくる。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.31 No.3より

N.M.I.
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