紀行・分類図鑑

冬虫夏草 シロオオセミタケ

冬虫夏草 シロオオセミタケ.jpg

シロオオセミタケ(仮名・学会未登録種)
Cordyceps sp. nov

発生地:青森県・十和田
採集年月日:Aug.20,1993

同翅亜目Homoptera、セミ科Cicadidaeの幼虫 に寄生する虫草で、本種は大形のエゾゼミTibicen japonicus Katoの幼虫に寄生した虫草菌である。子実体stromaの長さ19.2cm、地上部6cm、頭部の大きさ縦11mm、横7.0mm、柄の太さ 4.0mm、基部は細くなり1.2mmになる。

セミに寄生する代表的な虫草菌にセミタケCordyceps sobolifera(Hill.)B.et Br.があり、古来、中国では蝉茸として珍重され、小児のひきつけ、夜泣き、咳嗽、痙攣、湿疹を癒すのに用いられてきた。形態的に、子実体は棍棒状で、大きさも約2分の1に満たない。関西を中心に発生し、栃木県以北では未だ記録されていない。また、東北を中心に発生するオオセミタケCordyceps heteropoda Kobayashiは形態的にもタンポ状、頭部の色は淡紅褐色で、柄は淡色、本種と色合を異にする。

本種の子実体の地上部には二双生、白色、肉質で弾力性があり、地下部は徐々に細まり茶褐色に変わる。

子嚢殻peritheciumは完埋生で淡褐色、孔口は細口瓶形で、タンポ状頭部の表面に粒点状に密布する。大きさ580-650×280-320μ。

子嚢ascisの大きさ125×3-5μ、頭部は3×3μで、二次胞子は柵状形、大きさは5.0-7.5×2μになる。

N.M.I.による人工培養成功。

夕日に染まる十和田湖畔の広葉樹林帯で発見したもので、2例目は未だ見つかっていない。例年、同じ近辺を探索しているが、近年、林道が切り開かれて、自然環境の生態系が破壊され、種の絶滅に帰したものと思われる。

感染症 VOL.29 No.6より

N.M.I.
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