紀行・分類図鑑

冬虫夏草 オオセミタケ

冬虫夏草 オオセミタケ.jpg

オオセミタケ
Cordyceps heteropoda Y.Kobayashi

発生地:山形県最上郡釜渕
採集年月日:JUly.20,1979

同翅亜目Homopteraのセミ科Cicadidaeに寄生する 虫草で、エゾハルゼミ、コエゾゼミ、アブラゼミ、ヒグラシの幼虫の頭部、または背面から発生する。

現在、約350種類に及ぶ虫草(日本冬虫夏草)の中で、形態的に宿主である昆虫と子実体であるキノコが一体化し、最も典型的姿を形作る虫草はセミタケで あり、自然界の創造性と偉容を誇る虫草は他にない。

中国の薬用菌類として虫草に代表されるものに冬虫夏草C.Sinensis(Berk)Sacc. があり、他に虫草の仲間で代表される蝉花(セミタケ)C.Sobolifera(Hill.)Berk.が伝えられている。薬性は寒、 薬味は甘、無毒。痙攣を解き、風熱を散じ、疹を透すとあり、古来、薬用菌類の一つとして汎用されてきた。

日本にてもセミタケは関西地方を中心に、栃木県以南に発生する。しかし東北地方にはオオセミタケが一般的に多発し、基本種であるセミタケの発生は未だみていない。地域性により北は北海道のアイヌセミタケから、南は西表島のイリオモテセミタケに至るまで種特異性ある各種のセミタケが広く分布する。

本種のオオセミタケはタンポ型、子実体stromaは円形または楕円形の頭部と円柱状の柄からなり、根元は細くくびれ、やや硬い肉質の3つの部分からな る。

地上部は高さ10〜12cm、径3〜8mm、平滑、淡黄褐色、埋生部分は朱褐色となる。結実部(頭部)は頂生、大きさは7-9×6-7mm、淡褐色、子 嚢殻perithecium(埋生型)の先端が表面に粒点状に密布する。

子嚢果ascocarpiumは細口瓶形610-660×200-215μ、子嚢ascus250-300×5-7μ。子嚢の頭部は偏球形、 5.5-6.5μ。2次胞子sec.ascospores、6-8×1μ。

発生環境は落葉樹、照葉樹と針葉樹の混交林内に発生し、高温多湿の6〜8月にかけて最盛期である。日本の他はアフリカのコンゴ地方で発見されている。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.28 No.1より

N.M.I.
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