紀行・分類図鑑

冬虫夏草 フデノホスズメガタケ

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フデノホスズメガタケ(学会未記録種)
Cordyceps sp. nov.

発生地:山形県・山刀伐峠
採集年月日:Aug.20,1985

鱗翅目Lepidoptera、スズメガ科Sphingidaeの 成虫に寄生する虫草で、本種は水飛沫の上がる水量の多い岩場の苔上に発見された学会未記録種の虫草菌である。

鱗翅目の昆虫に寄生する虫草菌は鞘翅目と同じく多くの種類、世帯を有している虫草菌群である。しかも鱗翅目に限り成虫に寄生する虫草が多く発見されてい る。ガヤドリナガミノツブタケ、ガヤドリキイロツブタケ、アメイロスズメガタケなどがある。

本種は1985年の夏、山形県は北東部の栗駒高原に入る山刀伐峠の山麓で発見された虫草菌で、子実体が筆の穂の形態からフデノホスズメガタケと命名され た。

俳聖・芭蕉が曾良と共に山越えした奥の細道、登山道の入口には樹齢300年を越す樹林帯が広がり、鬱蒼とした茂みは緑濃い視界に包まれ、薄暗い足元には 清らかな小川が太古の時を刻んで今に流れている。

植生相はタニウツギ、ムシカリ、カシワ、サワグルミ、ミズナラ、トチノキ、ホウノキ、ブナなどが繁茂している。

子実体stromaは筆穂状、高さ18-19mm、太さ2.0-4.3mm、頭部は子嚢殻部peritheciumを裸生型に密布する。

N.M.I.による人工培養成功。

〔追記〕1985年以来、幾度となく同じ場所を訪れているが、未だ2体目の発見は記録されていない。そのため子嚢殻、子嚢胞子の大きさ未だ計測不能となっ ている。

感染症 VOL.30 No.6より

N.M.I.
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