紀行・分類図鑑

冬虫夏草 ハナイモムシタケ

ハナイモムシタケ.jpg

ハナイモムシタケ
Isaria martialis sp.

発生地:山形県・肘折
採集年月日:Oct.22,2001

虫草属菌の中で鱗翅目Lepidopteraの幼虫や蛹、成虫に寄生する虫草菌は最も多く発見されている。代表的な虫草菌にサナギタ ケC.militaris、トサカイモムシタケC.maritialis、ウスサナギタケC.takamontana、 蛾の成虫ではスズメガタケC.tuberculosumがあり、いずれも子嚢胞子ascosporeを空中に飛散して昆虫に感染し、世代を繰り返すコルジセップスCordyceps型の虫草菌である。

これに対して分生胞子conidiumをつくり、昆虫に感染させて世代を繰り返している不完全型の虫草菌がある。サナギタケの不完全型はコナサナギタケI.farinosaであり、ウスサナギタケの不完全型はハナサナギタケI.japonicaであるとされている。

虫草菌類学の泰斗、小林義雄氏は分生子柄が束生し、シンネマSynnemaを造る形態はカビの仲間であるパイシロマイセスPaecilomycesと本質的に異なり、これらの不完全型をイザリアIsaria型の虫草菌であると区別 している。 本菌はトサカイモムシタケの不完全型で蛾の幼虫であるイモムシに寄生し、同じ鱗翅目の不完全型であるハナサナギタケと形態を相違にする。

本菌の分生胞子を顕微鏡で観察すると球形で、大きさは直径2〜2.5μ 、極めて小さい。ハナサナギタケは長楕円形、または鎌状型で3.2-5×1.5-2μ と大きく、柄の色調は淡黄色である。

本菌は根元が淡黄褐色でハナサナギタケの子実体とは異なり、形態学的に分生胞子はコナサナギタケに近いのが特徴であ る。

ブナの原生林の中にV字型の渓谷が走り、タニウツギ、トチノキ、ミズナラ、オオカメノキなどが生育する広葉樹林帯内の氾濫台地にて発見する。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.33 No.1より

N.M.I.
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