紀行・分類図鑑

冬虫夏草 ハトジムシハリタケ

000140.jpg

ハトジムシハリタケ(学会未記録種)
Cordyceps sp.

発生地:山形県・釜淵
採集年月日:Aug.16,1978

鱗翅目Lepidpteraの小さい蛾の幼虫に発生する完全世代型の冬虫夏草属菌で、 子嚢胞子で世代を繰り返すコルジセップスCordyceps型の昆虫寄生菌である。地下生菌で、マユ(繭)の代わりに二枚重ねの葉の間に生息する蛾の幼虫 に感染寄生した珍しいキノコ(菌蕈)である。

地上部の子実体(キノコ)は細針型で、単一かまれに双生する場合がある。高さ3〜8cm、太さは0.8〜1mm、色は淡黄褐色で、弾力性ある繊維状のや や硬い感じの革質である。子実体上半部の結実部には、裸生型の子嚢殻peritheciumをまばらに発生させ、先端は細まる。子嚢殻の形態は卵形、茶褐 色で、本種の子実体はクリナスcrinalis特有の典型的なハリタケ型を呈する。

子嚢殻の大きさは420-480×270-320μm、2次胞子sec-sporeは7-8×1-1.5μm。

本種は深山渓畔の氾濫台地、枯葉堆積上にて採集、周辺の植物層はトチノキ、カツラ、ミズナラ、ホオノキ、サワグルミ、イタヤカエデ。

日本特産

N.M.I.による人工培養成功。

〔追記〕:コルジセップスCordyceps typeの子実体の形態には棍棒型を代表として、タンポ型、ミミカキ型、ハナヤスリ型、 ハスノミ型、クビオレ型、ハリタケ型などがあげられる。なかでも鱗翅目の幼虫に感染し発生する冬虫夏草属菌の子実体にはハリタケ型も多く、コツブイモムシ ハリタケC.crinalis Ells ex Lloydが、ハリタケ型の典型的な子実体の形態としてクリナリスCrinalis型 といわれる。

感染症vol.36 No6より

N.M.I.
聞く