紀行・分類図鑑

冬虫夏草 トサカイモムシタケ

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トサカイモムシタケ
Cordyceps martialis SPEGAZZINI

発生地:山形県 肘折
採集年月日:Aug.27,1978

鱗翅目Lepidptera、蛾の幼虫に寄生し、胸部や頸部、口器より子実体(キノコ)を発生させる。

自然界の驚異というべきか、写真は羽化の寸前に感染し、羽化の最中に足を出したままの昆虫の生命を奪い、昆虫の組織、組成を栄養源として摂取、見事に落 ち葉を突き通して子実体を発生させている。

これらの虫草菌は植物に寄生する木材腐朽菌等(キノコ)と異なり、昆虫の組織等、動物性蛋白を分解し、栄養源として成長する特殊の生理活性作用を持って いる。

中国の冬虫夏草C.Sinensis SACC.は古来吉祥のしるしとされ、夏は植物(陰)で実を結び、冬は虫(陽)と化して輪廻を繰り返す。天地自然が万物を育むという神仙思想が今に伝えら れる。植物が虫に変わる。虫が植物に変わる。中国では正しく自然界の怪奇現象の一つとしてとらえられた。

本菌は地生型の虫草で、地上部の子実体は不規則にゆがんだ棍棒状か、長楕円形、高さ3〜7cm、単一か、ときに2〜3個を束生させる。偏圧され、不規則に 分岐したトサカ状か、丸みのしわひだのある子実体をつくる。色調は淡黄褐色から淡朱色、柄の基部は細まり暗褐色で全体はやや硬い繊維肉質である。

子嚢(しのう)殻peritheciumは斜埋生で不規則粒点状に密布し、孔口は暗褐色でややあらく突出する。

子のう果ascocarpiumは細口ビン形、650-700×280-300μ、子のう胞子ascospora350×3-4μ、頭部ascisの径 は3μ、2次胞子Sec.sporeは5-7×1μ。

N.M.I.による人工培養成功。

分布:日本、中南米、ロシア沿海州。7〜9月頃、ブナ林床の原生地上に発生する。

感染症 VOL.28 No.3より

N.M.I.
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