紀行・分類図鑑

冬虫夏草 コツブイモムシハリタケ

コツブイモムシハリタケ.jpg

コツブイモムシハリタケ
Cordyceps crinalis Ellis ex Lioyd

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Aug.10,1988

鱗翅目Lepidptera、蛾や蝶の幼虫に寄生する虫草で、本種はミズナラ、アカシ デ、サワグルミ、トチノキ、オオカメノキ、ブナなどの広葉樹林内の流畔に発見された地生型の虫草菌である。

主にイガラ科Heterogenの蛾の幼虫に寄生する虫草菌で、近縁種にイラガツブタ ケC.cochlidiicola Y.Kobayasi et Shimizuがあり、イラガ科の蛾の硬い繭から子実体を発生させる点で本種と形態を相違する。

子実体stromataは針ケタ型、単一、または数本を虫体の頭部、腹部、尾部から発生させる。柄の上半部には取り巻くように結実部をつくり、裸生型の 子嚢殻peritheciumを不規則に結実させる。

子実体の高さ5〜8cm、太さ0.3〜1mm。円柱形で、淡灰褐色の弾力性あるやや硬い革質、不規則に屈曲する。

子嚢殻は卵形で、大きさ300-330×225-250μ。暗褐色、先端は半円形である。子嚢頭部ascusの径は4μ。2次胞子sec-sporeは 4-5×1μで、細長い短冊様の長方形である。

アメリカ、アフリカ、日本に分布。

N.M.I.による人工培養成功。

〔追記〕本種の唯一の発生地であったブナ樹林帯(民有林)がチップ用に切り出され、以来、自然の生態系は戻ることなく、本種の発見は記録されていない。

感染症 VOL.35 No.5より

N.M.I.
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