紀行・分類図鑑

冬虫夏草 クビオレカメムシタケ

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クビオレカメムシタケ(釜淵産)
Cordyceps pentatomi Koval

発生地:山形県最上郡釜淵
採集年月日:Sept.23,1997

異翅亜目(カメムシ亜目)Heteropteraのカメムシ成虫に寄生する虫草で、ロシアの菌類学者コバールによって1964年、沿海州より採集され、カメムシ科Pentatomidaeの名をとってCordyceps Pentatomi Kovalと命名された。

それ以前の1958年、日本菌類学者の泰斗、故小林義雄博士によって宮城県七ヶ宿町、稲子ブナ林帯で最初の発見という経緯があった。

カメムシ科トホシカメムシLelia decempunctata MOTSCHULSKYの胸部背側から子実体が発生し、背着型、地生型である。柄は円柱状、やや硬い繊維肉質で高さ4〜4.5cm、表面はネジレがあり黄褐色を呈する。湾曲した柄の頂部に淡黄褐色の結実部を枕状につける。

胞子果は埋生、洋梨形700-780×230-280μ、2次胞子は3-6×1μである。

本年の8月、山形県の古寺鉱泉にて3例目が発見され、写真は4例目の発見となった。釜淵、農林水産省林業試験場内にある八ヶ岳トウヒの標本林内にて矢萩禮美子氏により見出され、実に40年振りの採集となった。

写真のクビオレカメムシタケは虫体の腹側右胸部から発生し、子実体の高さ1.0〜2.2cm、柄の太さ0.08〜0.2cm、柄は捩れ、結実部は湾曲す る柄の頂部に生じる。柄の色は黄褐色、結実部の色は淡黄褐色、胞子果は成熟して後、半埋生型に変わり、粒状に密布する。洋梨形、大きさは 380-780×180-280μ。子のう胞子は細長い糸状で、隔壁から分裂して2次胞子(2-5×0.8-1.6μ)となる。越年生で旧年の子実体(ら しい)黒褐色の柄を残す。

感染症 VOL.27 No.6より

N.M.I.
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