紀行・分類図鑑

冬虫夏草 ホソエノアカクビオレタケ

ホソエノアカクビオレタケ.jpg

ホソエノアカクビオレタケ
Cordyceps rubrostromata Kobayasi

発生地:青森県・十二湖
採集年月日:July.30,1988

鞘翅目Coleopteraの幼虫に寄生するクビオレ型の虫草菌で、子実体の先端は赤 色でツルの嘴状に屈曲しているのが特徴である。フカフカする苔の中に宿主の幼虫があり、4本の赤紅色の子実体が観察された。結実部の子嚢殻 peritheciumは埋生型で、成熟して半埋生から輪郭の明瞭な叢生となる。

標準型のサビイロクビオレタケC.ferruginosa Kobayasi et Shimizuは結実部が背着性、円盤状で、子嚢殻はサビ色、または赤褐色で埋生、孔口は細かく結実部表面に密布する。その点で本種は色彩鮮やかな紅色、 柄は繊細で後者と異にしている。

本種の子実体は細針状で高さ6〜15mm、柄の太さ0.5〜1.0mmで繊維肉質、子嚢殻は卵形400-480×200-280μm。子嚢胞子は細長い糸 状で、2次胞子は短冊状で5〜6×1μmである。

湿度の高い広葉樹林帯、ブナ、ミズナラ、トチノキ、サワグルミ、カツラなどの生い茂る林内の風倒木、朽ち木上、岩の苔上に発生する。

N.M.I.による人工培養成功。

〔追記〕青森県十二湖は白神山系の北端に位置し、ブナなど広葉樹林の原生林に覆われ、清涼な湖水が緑豊かな自然の景観に包まれていた。このような太古の自然環境の中では、虫草属菌の希有の新発見が期待される。

感染症 VOL.35 No.1より

N.M.I.
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