紀行・分類図鑑

冬虫夏草 ケンガタコガネムシタケ

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ケンガタコガネムシタケ
Cordyceps obliquiordinata Y. Kobayasi et D. Shimizu

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Jun.22,1979

虫草属菌の中で鞘翅目Coleopteraのコガネムシ科Scarabaeidaeの 幼虫に寄生する。本種とは別に、コガネムシの幼虫に寄生する代表的な虫草菌に朽木生型のコガネムシタンポタケCordyceps volkiana Kobayashiがある。採集当初、山林渓谷の砂地に発見し、鱗翅目Lepidopteraの地生型の 幼虫と誤認し、追培養しないままにホルマリン漬けの標本となった。

コガネムシは6本足、鱗翅目の蛾の幼虫は頭部から尾部まで足が並列して発生し、区別される。未熟であり、子嚢殻peritheciumの未確認のため新 種でありながら同定不能であった。

昆虫の種によって、棲息環境によってそれぞれ異なるが、大きく分けて昆虫が地中にあって菌核を形成する地生型、蜘蛛やカイガラムシなど木の枝や葉にて棲息し、付着して菌核をつくる気生型と、コガネムシ、コメツキムシなどの朽木生甲虫類の幼虫が虫草菌に侵されて菌核をつくる朽木生型の三つに分類される。

本菌の発見当初、子実体の剣型に因んでケンガタコガネムシタケと、清水先生により命名された。

子実体は単一、太針状で高さ3〜5.3cm。結実部には斜埋生の微細な子嚢殻を密布する。

子嚢殻は卵形420-480×300-330μで、子嚢胞子ascosporeの太さは3μ、子嚢ascusの頭部の径2.5-3μ。2次胞子sec- sporeは短冊状で7-10-18×0.8-1μ。

N.M.I.による人工培養成功。

1993年、群馬県川原湯温泉で、武田桂三氏によって成熟本菌の採集があり、別名ナガホノケンガタムシタケともいわれている。

感染症 VOL.32 No.5より

N.M.I.
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