紀行・分類図鑑

冬虫夏草 クチキフサノミタケ

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クチキフサノミタケ
Cordyceps clavata Y. kobayasi et D.Shimizu

発生地:青森県・十二湖
採集年月日:July.29,1988

鞘翅目Coleoptera、甲虫類の幼虫に寄生する虫草で、本種はミズナラ、アカシ デ、サワグルミ、トチノキ、カツラ、ブナなどの広葉樹林内に発見された朽木生の虫草菌である。

鞘翅目のゴミムシダマシ科Tenebriodaeの昆虫に寄生する虫草菌で、近縁種に クチキカノツノタケCordyceps sp.がある。幼虫は木の皮、木材質、キノコなどを食べる。

本種は1988年の夏、青森県と秋田県と境を接する世界遺産に指定された白神山系北端の国定公園、十二湖で発見された虫草菌である。

十二湖には大小さまざまな湖が数多く散在しており、水量豊かな土地柄である。

子実体stromataは太針状、突き抜き型で、単一または2〜5個を生じ、頂部はやや細まる。上部に柄を取り巻くように結実部をつくり、半裸生の子嚢 殻peritheciumを不規則塊状に結実させる。

子実体の高さ1.0〜3.5cm、太さ2〜3mm、円柱形で、淡クリーム白色の弾力性あるややかたい肉質である。

子嚢殻は卵形で、大きさ420-550×230-330μ。子嚢ascus頭部の径3.0μ、2次胞子は5-9×1.5μで空中に飛散させて世代を繰り 返している。

十和田、十二湖に発生するが、比較的発生率の少ない虫草菌である。

N.M.I.による人工培養成功。

〔追記〕1950年、秩父両神山ではじめて見出され、以来、1980年代に入り十和田国立公園を中心に発見された。近年、国内各地で採集が記録されるよう になったが、発生は極めて稀である。

感染症 VOL.31 No.2より

N.M.I.
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