紀行・分類図鑑

冬虫夏草 カブヤマツブタケ

カブヤマツブタケ.jpg

カブヤマツブタケ
Cordyceps macularis f. sp.

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.30,1977

鞘翅目Coleoptera、甲虫類の幼虫に寄生する虫草で、本種はミズナラ、ハンノ キ、アカシデ、イタヤカエデ、トチノキ、ブナなどの広葉樹林内にて発見された虫草菌である。

鞘翅目の昆虫に寄生するこの種の虫草菌には、他にミヤマムシタケC.macularis Mains、ホソエノミヤマムシタケC.macularis f. sp.が近縁種として知られている。

本種は1977年の夏、山形県は県北の加無山(997m)の麓で初めて発見された虫草菌で、加無山の地名にちなんでカブヤマツブタケと命名された。

発見したのは現在、鷹匠として著名な松原英俊氏で、1970年代、秋田県と県境を接するブナの原生林内にある鷹の調教場所で発見した。鬱蒼とした森林の 中には三階滝という水量豊かな3段の滝があり、渓流となり、水飛沫をあげて流れる川があった。

子実体stromataは太針状で、柄の長さ1.5-2.8mm、太さ約1mm、頂部はやや細まる。上部の表面には円板状か塊状に、径2-4mmの結実部 をつくり、裸生型か半裸生型の子嚢殻peritheciumを不規則に叢生させる。

子実体は淡黄土色、弾力性あるややかたい肉質で、子嚢殻は卵球形、大きさ250-300×150-170μ。子嚢ascusの幅3.0μ、頭部 1.0-1.2×0.5μ、長さ300μ。2次胞子sec-sporeは2.5-3.0μ×0.5μで、空中に飛散させて世代を繰り返している。山形県北を中心に発生するも極めて稀である。

N.M.I.による人工培養成功。

〔追記〕1998年8月、21年振りに同じ場所を訪れたが、森林の伐採が進み、ブナの原生林にはダンプカーが登山道を切り開き、昔の面影が消えていた。鷹匠の松原氏は自然破壊のため鷹の訓練ができず、自然豊かな朝日村へと移動した。

感染症 VOL.31 No.1より

N.M.I.
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