紀行・分類図鑑

冬虫夏草 ウスイロタンポタケ

ウスイロタンポタケ.jpg

ウスイロタンポタケ
Cordyceps gracilioides Y.Kobayasi

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.7,1999

虫草属菌の中で鞘翅目Coleopteraは最も世帯の大きい菌類で、朽木虫の幼虫に寄生する 虫草が多く発見されている。その中でもコメツキムシ科Elateridae幼虫に寄生するものが多いが、形態学的には宿主である昆虫の 判然としない種が多い。

本菌の採集地はオオセミタケC.heteropodaの発生地で、発見当初、地上部の外観から やや小さめの未熟のオオセミタケと勘違いするほど、類似した形態であった。地上部表面の枯れ葉を払い、朽木生型の甲虫に寄生したウスイロタンポタケと判明 した。他にタンポ型の甲虫寄生菌にはコメツキタンポタケがあり、本菌よりもやや小さく繊細であることを除けば全く類似する。

子実体は虫体の頭部より出て、単一、肉質で、柄は円柱状、地上部の高さ50mm、太さ3.3mmであった。頭部の結実部は淡黄褐色、球形のタンポ状、直径 7mmの大きさであった。

子嚢殻peritheciumは完埋生、細長い倒卵形で830-900×200-280μ。子嚢ascusは600-700×6-6.5μ。2次胞子 sec-sporeは6.5-8.5×1.2-1.5μであった。

雑木の少ない杉とナラの混交林で、早春には水バショウが咲く沢地と共に、湿度の高い樹林内で採集された。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.33 No.2より

N.M.I.
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