紀行・分類図鑑

冬虫夏草 コブガタアリタケ

コブガタアリタケ.jpg

コブガタアリタケ
Torrubiella collariatus sp.

発生地:福島県飯館村
採集年月日:Nov.5,2006

膜翅目Hymenoptera、アリ科Formicidaeの蟻に寄生する ノムシタケ属(冬虫夏草属)の子嚢菌で、ムネアカオオアリの頭部と胸部結節の間から襟巻状にトルビエラTorrubiella型の結実 部を発生させる。

アリ寄生の子嚢菌の場合はコルジセップスCordyceps型の柄のある子実体 stromataをつくるのが一般的であり、虫体表面に偏平状のトルビエラ型結実部をつくるのは気生型の本種のみである。

アリ虫体の大きさ11mm、黒褐色で胸部結節はブドウ色がかった赤色である。頭部と胸部結節の部分にコブ状、黒褐色の結実部をつくり、子嚢殻 peritheciumの口縁部を微かに突出する。 コブ状結実部の大きさ1.7〜2.7mm、厚さ1.0〜1.2mmで、コブ状塊が2〜3個つらなり、襟巻状に頭部と胸部の結節間の部分を取り巻いてい る。

子嚢殻は埋生、卵形、大きさ800-880×480-560μ。子嚢胞子ascosporaは細長い太針状で多くの隔壁があり、2次胞子に分裂しない。子 嚢胞子の太さは2-2.5μ。

本種はヤマツツジの小枝を移動中、昆虫寄生子嚢菌に感染して息絶えた姿で、まさに巌のような癌細胞に侵されて死の転帰に至ったかのような無惨なアリの姿 である。

発生地はヤマウルシ、イヌシデ、ミズナラ、ハウチワカエデなど林内のヤマツツジの葉柄上に発生する。

1986年、福島県飯館村五郎沢にて貝津好孝氏により初めて発見されたアリ寄生の子嚢菌である。

現在、人工的に半固形培地に培養中で、輝きのある白色針状の菌糸体が放射状に発育している。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症vol.37 No1より

N.M.I.
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