紀行・分類図鑑

冬虫夏草 サンゴクモタケ

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サンゴクモタケ
Torrubiella rosea Y.Kobayasi et D.Shimizu

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.19,1980

虫草属菌には昆虫に感染して、虫体の組織や成分を栄養として食餌し、成長するコルジセップスCordyceps型 を主体とする虫草菌と、クモ類などの節足動物に寄生するクモ寄生菌Torrubiella属に分類される。これらはいずれも子嚢菌亜門 ASCOMYCOTINAの仲間に入る。蜘蛛に感染した子嚢菌はクモの体内に侵入し、表皮を残して組織、組成分を栄養にしながら菌核を形成、その菌核から トルビエラTorrubiella属特有の白色菌糸体で覆われた菌座stromaを発生させる。

クモ目Araneinaに寄生の虫草菌には、宿主のクモ体表面に子嚢殻 peritheciumをつくるトルビエラ型の発生が一般的である。

その他クモ寄生の分生子型であるイザリア型のクモタケIsaria atypicola Yasudaや、ギベルラタケGibellula aranearum(Sch.) H. Sydowが典型的な不完全型の虫草菌として知られている。

本菌はクモに寄生した典型的なトルビエラ菌で、気生型か地上生型か、体表面には白色の菌糸膜が覆い、結実部は体の全面に及び、珊瑚のような子嚢殻を部分的 に集合させて発生させる。

子嚢殻は裸生型の卵形で570-650×320-350μ、鮮やかな橙紅色で、子嚢の大きさは4×2.5-3μ、2次胞子sec-sporeは4×1μ であった。

ブナの広葉樹林帯、サワグルミ、トチ、ホウノキ、ミズナラの混交する小流畔で採取された。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.35 No.2より

N.M.I.
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