紀行・分類図鑑

冬虫夏草 クモタケ

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クモタケ
Isaria atypicola Yasuda

発生地:京都・北山
採集年月日:July.10,2001

節足動物のクモ目Araneinaに寄生する虫草の中で、最も代表的とされる不完全型 のイザリアIsaria型、虫草菌である。

トタテグモの成虫に寄生し、地中生型の虫草で、地下にある袋の中のトタテグモから子実体が発生する。不完全世代の子実体の頭部には淡紫色の分生胞子 conidioporeが密布し、空中に飛散させて世代を繰り返す。コレとは別に不完全型のクモタケとしてスチルベラ科のギベルラタケGibellula aranearum(Sch.) H. Sydow が普遍的に発生する。

一般にクモ寄生の虫草菌は、クモの身体の背部や足部の体表面に裸生型の子嚢殻peritheciumを造る完全世代のトルビエラTorrubiella型 が基本種としての特徴である。これら代表的クモ寄生の虫草菌にはサンゴクモタケ、トルビエラクモタケなど、他に多くのクモ寄生のトルビエラ種が記録されて いるが、宿主であるクモが地中生型で、イザリア型の子実体を形成するのは本種のみである。

バッカクキン科、虫草属には大きく分けて子実体を造るコルジセップスCordyceps属、ヨコバエに寄生、子嚢果の体表面生ポドネク テリアPodonecteria属、そしてカイガラムシ、主としてクモに寄生するトルビエラTorrubiella属 の3種類に分類される。不完全型にはこれらの分類はない。

本種はトタテグモ体長約10〜15mmの地蜘蛛に寄生。子実体は棍棒状で、大きさ8.5×0.4cm、弾力性ある肉質、地上部は紫色の分生胞子で覆われ るのがこの種の特性である。分生胞子は長楕円形で、大きさ0.9×3.3μ。

発生時期:6月末〜9月。発生場所:神社、寺院の境内、庭園などの照葉樹林内。

註:クモは節足動物・クモ形類、真正クモ目に属し、正しくは昆虫目と区別される。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.31 No.6より

N.M.I.
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