紀行・分類図鑑

冬虫夏草 クモノオオトガリツブタケ

クモノオオトガリツブタケ.jpg

クモノオオトガリツブタケ(タマクモタケ)
Torrubiella globosa Y. Kobayashi et D. Shimizu

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Aug.21,1978

クモ目Araneinaに寄生する虫草で、極めて微小なクモの成虫を殺傷し、これに発生する。

クモの成虫に寄生し、気生型の虫草で、本種の他に釜渕発見のクモ寄生新種にクモノエツキツブタケが記録されている。

他に釜渕発生のクモ寄生の虫草に、ハスノミクモタケ、コガネクモタケ、サンゴクモタケ、ミジンクモタケ、クロツブシロクモタケが記録される。

バッカクキン科、虫草属には大きく分けてコルジセップスCordyceps属、ポドネ クテリアPodonecteria属、主としてクモ、カイガラムシに寄生するトルビエラTorrubiella型に 3分類される。他にイザリア型のクモ寄生の虫草には、トタテグモに寄生する地中生型のクモタケIsaria atypicola Yasudaが代表される。

トルビエラ属の虫草は虫体を菌糸体で覆う菌座の表面上に、子嚢殻peritheciumを裸生状に形成するのが普遍的な特徴である。

本種はタマコグモ体長約1mmに満たない小さいクモに寄生する。子実体を形成せず、綿状の菌糸体が球状の菌座stromaとなり、裸生の大きな子嚢殻を 発生、不完全型の分生子柄synnemaを球状に造るのが種の特性である。

苔に着床し、宙吊り状に発生している。クモの活動状態そのままに感染し、虫体、クモの糸蛋白を分解して栄養源とし、球状の菌糸塊をつくる。

表面には無数の紫色球状の分生胞子をつける。

子嚢殻は長円錐形、裸生型で美しい淡黄色、後にアメ色に変わる。大きさは1000-1300×400μ。

子嚢胞子ascosporeは細長い糸状で、子嚢の太さ3-4μ。頭部は径3-4μ。放出後、隔壁から分裂して2次胞子sec- spore1-1.5×5μとなり、空中へ飛散する。

山地渓畔の流水でえぐられた窪みにある苔、枯草、杉の枯葉、枝などから下垂して発生する。

発生時期:7月末〜8月。日本特産。

N.M.I.による人工培養成功。

註:クモは節足動物・クモ形類、真正クモ目に属し、正しくは昆虫目と区別される。

感染症 VOL.28 No.5より

N.M.I.
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