紀行・分類図鑑

冬虫夏草 アカミノオグラクモタケ

アカミノオグラクモタケ.jpg

アカミノオグラクモタケ
Cordyceps coccidioperitheciata Y. Kobayashi et D. shimizu

発生地:山形県・最上郡
採集年月日:Aug.20,1983

虫草属菌には昆虫に寄生するもの、菌生虫草といわれる地下生菌(土団子菌)に二次的に寄生するもの、節足動物であるクモや、ダニに寄生するものがあり、 子嚢菌類の仲間に入る。

子嚢菌類には上記の他、有名なものでライムギなど、稲科植物に寄生する麦角菌がある。

一般に虫草属菌は宿主となる昆虫が菌核となり、これに子実体を形成する。対して菌生虫草の場合は地下生菌が菌核となり、この菌核から栄養を摂取しながら 成長する。クモに寄生した子嚢菌の場合も、宿主であるクモの体部を菌核とし、世代を繰り返している。

クモ目Araneinaに寄生する虫草菌には、宿主であるクモ虫体の表面に子嚢殻 peritheciumをつくるトルビエラTorrubiella型の発生が一般的であるが、本菌の場合は子実体がコルジセップスCordyceps型 を形成し、種特異性が顕著に発現している。宿主のクモは枯葉に包まれて明白に確認できない。

子実体は2本で放射状に広がり、頂部に裸生で鮮やかな橙黄色の子嚢殻をつくる。子実体の大きさ2.5-10×0.5-1.4mm、白色、綿毛質である。

子嚢殻は裸生で洋梨形、大きさ500-625×250-275μで、子嚢胞子ascosporeの太さじゃ3μ、子嚢ascus頭部の径2.5μであ る。2次胞子sec-sporeは柵状型で3×1μであった。

山形県最上町管内にて最初、渡部正一氏により発見されて以来、日本各地で採集が記録されるようになったが、発生は極めて稀。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.32 No.4より

N.M.I.
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