鞘翅目

ムラサキクビオレタケ

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ムラサキクビオレタケ
Cordyceps purpureostromata Y.K et D.S

発生地:十和田・奥入瀬
採集年月日:Sept.23,1988

鞘翅目Coleopteraの甲虫の幼虫に寄生する虫草で、山地の朽ち木上に発生す る。1950年、秩父両神山で発見され、以来各地で収集されている。

子実体carpaは1〜2個、幼虫の腹部より生じ、頭部に背着生の楕円形〜円盤状の子嚢殻叢を形成し、クビオレ型で頂端は鳥の嘴のように突出する。

長さ7〜25mm、太さ0.5〜1.8mm、弾力性のある肉質、淡紫色〜灰紫色である。子のう胞子は洋梨状、埋生で子のうの先端は子嚢殻叢の表面に粒点状 に密布する。子のう胞子65〜75×2.5μ、2次胞子は13〜23×3μ で細長い糸状胞子に分裂する。

太陽光線を背景にしてかざしてみると、子のう胞子が子嚢殻 Peritheciumから銀色に輝いて放射状に噴出しているのを観ることができる。

人工培養(菌株CY42)

不完全型Isariaで分生胞子conidiosporeにて世代を繰り返す。 子実体carpaは成熟するとともに菌糸体の色は次第に紫色に変化していく。

東北薬大第二癌研の石川正明教授のS-180癌細胞に対する担癌マウスを使っての動物実験ではハナサナギタケI.japonicaよ りも強い抗腫瘍活性が得られた。

感染症 VOL.27 No.3より

マルミノコガネムシタケ

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マルミノコガネムシタケ
Cordyceps konnoana Y. Kobayashi et D. Shimizu

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Jun.22,1979

鞘翅目Coleoptera、コガネムシ科Scarabaeidaeの 幼虫に寄生する虫草で、幼虫の頭部や、胸部、尾部より1〜2本の子実体を発生させる。

鞘翅目の幼虫に寄生する類似の虫草菌には、他に福島県稲子山中で発見されたジムシヤドリタケC.superficialis(Peck.) が知られているが、同じコガネムシの幼虫に寄生しながら、前者は全体的に淡茶褐色、後者は黒褐色で明らかに相違する。

コガネムシの棲息するクヌギ、ナラ、ブナ、ヤマハンノキ、ミズナラの森林帯に発生するほか、ガマズミ、ノリウツギ、クワ、アオキ、カヤなどの低木の植物 相にも発生する。

子実体storomataは太針、円柱状で、地上部の高さ3.5〜5.1cm、太さは0.9〜1.2mmになり、頂部は細まる。

子実体の上部に結実部をつくり、裸生型の球形か半球形のの子嚢殻peritheciumを着ける。柄は弾力性ある肉質で、暗灰褐色か灰褐色、先端は淡灰 褐色でやや白っぽい色を呈する。

子嚢殻は茶褐色、大きさは300×400-420μmで結実部に密布する。子嚢ascusの太さ3.8-5μ、頭部の径3-5μ。2次胞子sec- sporeは4-6×1μmで隔壁から分裂して短冊状となり、空中に飛散する。

人工培養(菌株CY37)、日本固有種。

感染症 VOL.31 No.4より

アメイロツブタケ

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アメイロツブタケ
Cordyceps falcatoides Y.Kobyasi et D.Shimizu

発生地:青森県・十和田
採集年月日:Aug.8,2006

鞘翅目Coleopteraの幼虫に寄生する冬虫夏草属菌の一種で、朽ち木生の幼 虫に寄生したものである。本菌は太針状の典型的なツブタケ型で虫体から3本の子実体を生じ、頭部の結実部には子嚢菌特有の子嚢殻Perithecumを裸 生的に叢生させる。

類似の冬虫夏草属菌の一つにナガツブハリタケC.elongatoperitheciata Y.Kobayasi et D.Shimizuがある。宿主となる昆虫も鱗翅目Lepidopteraの幼虫であり、子嚢殻の形態では前者は卵型、後者では長紡錘形で大きいのが特徴 の差である。

本種の子実体は円柱状で全体的にアメ色、大きさ17-24×0.8-1mm、平滑で先端は細まり突き出す。

子嚢殻は裸生で茶褐色、卵形、大きさ350-400×300-250μm、二次胞子sec-sporeの大きさ125-150×3μm。

ブナ、ケヤキ、ミズナラ、ヤマハンノキ、サワグルミなどの林内倒木の朽木上に発生する。

日本固有種。発生は極めて稀、1979年に十和田で発見され菌学会に報告、記録されている。

人口培養(菌株CY243)

感染症vol.37 No2より

ウスイロタンポタケ

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ウスイロタンポタケ
Cordyceps gracilioides Y.Kobayasi

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.7,1999

虫草属菌の中で鞘翅目Coleopteraは最も世帯の大きい菌類で、朽木虫の幼虫に寄生する 虫草が多く発見されている。その中でもコメツキムシ科Elateridae幼虫に寄生するものが多いが、形態学的には宿主である昆虫の 判然としない種が多い。

本菌の採集地はオオセミタケC.heteropodaの発生地で、発見当初、地上部の外観から やや小さめの未熟のオオセミタケと勘違いするほど、類似した形態であった。地上部表面の枯れ葉を払い、朽木生型の甲虫に寄生したウスイロタンポタケと判明 した。他にタンポ型の甲虫寄生菌にはコメツキタンポタケがあり、本菌よりもやや小さく繊細であることを除けば全く類似する。

子実体は虫体の頭部より出て、単一、肉質で、柄は円柱状、地上部の高さ50mm、太さ3.3mmであった。頭部の結実部は淡黄褐色、球形のタンポ状、直径 7mmの大きさであった。

子嚢殻peritheciumは完埋生、細長い倒卵形で830-900×200-280μ。子嚢ascusは600-700×6-6.5μ。2次胞子 sec-sporeは6.5-8.5×1.2-1.5μであった。

雑木の少ない杉とナラの混交林で、早春には水バショウが咲く沢地と共に、湿度の高い樹林内で採集された。

人工培養(菌株CY99

感染症 VOL.33 No.2より

エゾコガネムシタケ

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エゾコガネムシタケ
Cordyceps sp. D.Shimizu

発生地:北海道・恵庭
採集年月日:Aug.28,2003

鞘翅目Coleoptera、コガネムシ科Scarabaeidaeの 幼虫に寄生する地中生の虫草菌で、幼虫の頭部、胸の背部より子実体が発生し、途中1〜3本に枝分かれする。

鞘翅目の幼虫に寄生する本種に類似の虫草菌には、山形県の摩耶山で発見されたマヤサンエツキムシタケCordyceps sp.が知られている。

両者の相違は、子嚢殻peritheciumが本種では埋生型であるのに対して、マヤサンエツキムシタケは半埋生型であり、子嚢ascusの形態も異に する。

鞘翅目の昆虫に寄生する虫草菌は、鱗翅目の昆虫に寄生する虫草菌と同様に最も世帯数の多い虫草菌である。なかでもコガネムシの幼虫に寄生した朽木生型の コガネムシタンポタケC.neovolkianaは鞘翅目虫草菌の代表の一つとされており、本種についても宿主と子実体との構成におい て、鞘翅目の地中生型では虫草菌の典型的な形を現している。

子実体stromataは棍棒状、地上部は高さ4〜7cm、太さは3〜5mmになり、頂部の結実部には淡黄色、球形の子嚢殻を埋生する。柄は弾力性ある肉 質で白色。地上部は灰白色を呈する。

子嚢殻の大きさは390-400×350-400μm。子嚢の幅3.8μm。子嚢殻の口縁は淡黄色の円形で結実部に密布する。

日本固有種で現在では北海道のみに発生する。
人工培養(菌株CY241)人工の寒天培地上に子嚢果のある子実体を発生させ、追培養を継続して いる。

〔追記〕北海道恵庭地域の山稜はトドマツ林の二次林の人工林に恵まれ、20〜30年生のトドマツ林の林床にはトドマツの枯れ葉が堆積、冬の寒さに耐える保 湿効果でコガネムシが産卵、幼虫が越冬できる適正な温度と湿度が保たれているらしい。

トドマツの枯葉は5〜8cmのマット状に堆積し、昆虫の生息に適した環境は、本土では虫草菌の発生環境としては考えられない生態系であり、新しい知見で あった。

感染症 VOL.34 No.2より

オサムシタケ

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オサムシタケ
Tilachldiopsis nigra Yakusiji et Kumazawa


発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Aug.5,1980

鞘翅目Coleoptera、オサムシ科Carabidaeの幼 虫、または成虫に寄生する虫草で、幼虫の胸部や口部、腹部、尾部より1〜15本の不完全型の子実体を不規則に発生させる。

鞘翅目、甲虫類の中でもオサムシは、ミミズ、カタツムリ、蝶や蛾の幼虫を食べる肉食系の昆虫で、棲息する生態系も領域的に限定される。

本種の発生地にはブナ、スギ、ホウノキ、トチ、ミズナラの森林帯があり、低木のタニウツギ、ガマズミ、ノリウツギ、アオキなどの植物が繁茂する氾濫台地 にて発見された。

同種の完全型でオサムシタンポタケCordyceps entomorrhiza Link.があり、子実体の先端にタンポ状の結実部をつくる。時に、柄の中間に不完全型の虫ピン様分生子をつくる場合がある。

本種の子実体storomataは黒色の針がね状、弾力性ある革質で硬い、地上部の高さは2.0〜8.0cmで太さは0.8-1.3mmになる。柄は不 規則に屈曲し、白色虫ピン様の分生子柄を派生させる。分生胞子の大きさ10-12×1.7-2μ。

日本固有種。人工培養(菌株CY21

感染症 VOL.31 No.5より

カブヤマツブタケ

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カブヤマツブタケ
Cordyceps macularis f. sp.

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.30,1977

鞘翅目Coleoptera、甲虫類の幼虫に寄生する虫草で、本種はミズナラ、ハンノ キ、アカシデ、イタヤカエデ、トチノキ、ブナなどの広葉樹林内にて発見された虫草菌である。

鞘翅目の昆虫に寄生するこの種の虫草菌には、他にミヤマムシタケC.macularis Mains、ホソエノミヤマムシタケC.macularis f. sp.が近縁種として知られている。

本種は1977年の夏、山形県は県北の加無山(997m)の麓で初めて発見された虫草菌で、加無山の地名にちなんでカブヤマツブタケと命名された。

発見したのは現在、鷹匠として著名な松原英俊氏で、1970年代、秋田県と県境を接するブナの原生林内にある鷹の調教場所で発見した。鬱蒼とした森林の 中には三階滝という水量豊かな3段の滝があり、渓流となり、水飛沫をあげて流れる川があった。

子実体stromataは太針状で、柄の長さ1.5-2.8mm、太さ約1mm、頂部はやや細まる。上部の表面には円板状か塊状に、径2-4mmの結実部 をつくり、裸生型か半裸生型の子嚢殻peritheciumを不規則に叢生させる。

子実体は淡黄土色、弾力性あるややかたい肉質で、子嚢殻は卵球形、大きさ250-300×150-170μ。子嚢ascusの幅3.0μ、頭部 1.0-1.2×0.5μ、長さ300μ。2次胞子sec-sporeは2.5-3.0μ×0.5μで、空中に飛散させて世代を繰り返している。山形県北 を中心に発生するも極めて稀である。

人工培養(菌株CY30

〔追記〕1998年8月、21年振りに同じ場所を訪れたが、森林の伐採が進み、ブナの原生林にはダンプカーが登山道を切り開き、昔の面影が消えていた。鷹 匠の松原氏は自然破壊のため鷹の訓練ができず、自然豊かな朝日村へと移動した。

感染症 VOL.31 No.1より

クチキカノツノタケ

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クチキカノツノタケ
Cordyceps sp.

発生地:青森県・十二湖(白神山系)
採集年月日:July.29,1988

鞘翅目Coleoptera、甲虫類の幼虫に寄生する虫草で、本種はミズナラ、サワグ ルミ、トチノキ、カツラ、ブナなど、広葉樹林の生い茂る原生林内に発見された朽木生型の虫草菌である。

ゴミムシダマシ科Tenebriodaeの幼虫に寄生する虫草菌で、近縁種にリョウガ ミクチキツブタケ(秩父両神山産)とクチキフサノミタケ(十和田産)などが知られている。この幼虫はキノコ、木の皮、種子、腐った植物質などを食べる。

幼虫は倒木や朽木の中に生息し、本菌に感染した後、朽木の表面に子実体(キノコ)を発生させる。

子実体stromataは太針状、幼虫の頭部と尾部から子実体を1本ずつ、または2本を生じ、頂部はやや細まる、柄の表面には結実部をつくり、裸生の子嚢 殻peritheciumを不規則に結実させる。

本種の子実体の高さは3〜5cm、太さ2〜4mm、円柱形で、淡赤白色の弾力性あるややかたい肉質であった。

子嚢殻は卵形で、大きさ310-350×160-170μ。子嚢ascus頭部の径2.5μ、2次胞子は6-12×1.5μで、空中に飛散させて世代を 繰り返している。

人工培養(菌株CY108)、日本特産

感染症 VOL.34 No.1より

クチキフサノミタケ

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クチキフサノミタケ
Cordyceps clavata Y. kobayasi et D.Shimizu

発生地:青森県・十二湖
採集年月日:July.29,1988

鞘翅目Coleoptera、甲虫類の幼虫に寄生する虫草で、本種はミズナラ、アカシ デ、サワグルミ、トチノキ、カツラ、ブナなどの広葉樹林内に発見された朽木生の虫草菌である。

鞘翅目のゴミムシダマシ科Tenebriodaeの昆虫に寄生する虫草菌で、近縁種に クチキカノツノタケCordyceps sp.がある。幼虫は木の皮、木材質、キノコなどを食べる。

本種は1988年の夏、青森県と秋田県と境を接する世界遺産に指定された白神山系北端の国定公園、十二湖で発見された虫草菌である。

十二湖には大小さまざまな湖が数多く散在しており、水量豊かな土地柄である。

子実体stromataは太針状、突き抜き型で、単一または2〜5個を生じ、頂部はやや細まる。上部に柄を取り巻くように結実部をつくり、半裸生の子嚢 殻peritheciumを不規則塊状に結実させる。

子実体の高さ1.0〜3.5cm、太さ2〜3mm、円柱形で、淡クリーム白色の弾力性あるややかたい肉質である。

子嚢殻は卵形で、大きさ420-550×230-330μ。子嚢ascus頭部の径3.0μ、2次胞子は5-9×1.5μで空中に飛散させて世代を繰り 返している。

十和田、十二湖に発生するが、比較的発生率の少ない虫草菌である。

人工培養(菌株CY117)日本特産

〔追記〕1950年、秩父両神山ではじめて見出され、以来、1980年代に入り十和田国立公園を中心に発見された。近年、国内各地で採集が記録されるよう になったが、発生は極めて稀である。

感染症 VOL.31 No.2より

ケンガタコガネムシタケ

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ケンガタコガネムシタケ
Cordyceps obliquiordinata Y. Kobayasi et D. Shimizu

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Jun.22,1979

虫草属菌の中で鞘翅目Coleopteraのコガネムシ科Scarabaeidaeの 幼虫に寄生する。本種とは別に、コガネムシの幼虫に寄生する代表的な虫草菌に朽木生型のコガネムシタンポタケCordyceps volkiana Kobayashiがある。採集当初、山林渓谷の砂地に発見し、鱗翅目Lepidopteraの地生型の 幼虫と誤認し、追培養しないままにホルマリン漬けの標本となった。

コガネムシは6本足、鱗翅目の蛾の幼虫は頭部から尾部まで足が並列して発生し、区別される。未熟であり、子嚢殻peritheciumの未確認のため新 種でありながら同定不能であった。

昆虫の種によって、棲息環境によってそれぞれ異なるが、大きく分けて昆虫が地中にあって菌核を形成する地生型、蜘蛛やカイガラムシなど木の枝や葉にて棲 息し、付着して菌核をつくる気生型と、コガネムシ、コメツキムシなどの朽木生甲虫類の幼虫が虫草菌に侵されて菌核をつくる朽木生型の三つに分類される。

本菌の発見当初、子実体の剣型に因んでケンガタコガネムシタケと、清水先生により命名された。

子実体は単一、太針状で高さ3〜5.3cm。結実部には斜埋生の微細な子嚢殻を密布する。

子嚢殻は卵形420-480×300-330μで、子嚢胞子ascosporeの太さは3μ、子嚢ascusの頭部の径2.5-3μ。2次胞子sec- sporeは短冊状で7-10-18×0.8-1μ。

人工培養(菌株CY112

1993年、群馬県川原湯温泉で、武田桂三氏によって成熟本菌の採集があり、別名ナガホノケンガタムシタケともいわれている。

感染症 VOL.32 No.5より

コガネムシタンポタケ

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コガネムシタンポタケ
Cordyceps neovolkiana Y. Kobayashi

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.25,1986

鞘翅目Coleoptera、コガネムシ科Scarabaeidaeの 幼虫に寄生する甲虫類では代表的虫草である。

鞘翅目に寄生する虫草は鱗翅目Lepidoptera以上に広い世帯を持つ虫草菌 である。本種は朽木生で幼虫の背部、頭部、ときには尾部より美しい橙黄色の子実体を発生させる。まれに地生型がある。

直径1m以上に及ぶ風倒木、半ば朽ちたブナの巨木等、広葉樹林帯の原生林内に発生する。原生林の乱伐と共に自然界の生物生態系が破壊され、近年、この種 の虫草菌の発見は希有のものとなった。

子実体stromaは単一か2〜5個発生し、頭部に橙黄色の球形、または扁球形の子嚢果ascomaをつくる。柄は淡褐色、円柱状で柔らかい肉質、基部は 殆ど白色である。高さ約1〜2cmとなる。

子嚢殻peritheciumは完埋生型で、頭部の子嚢果表面に粒点状に密布する。卵形、または楕円状で大きさ340-460×140-165μ。

子嚢胞子ascosporeは細長い糸状で、空中に放出後、隔壁から分裂して冊状の2次胞子となる。子嚢の大きさ230-300×9-10μ。子嚢頭部 ascusは球状、直径4-5μ。2次胞子は3-8×2μ。

人工培養(菌株CY100)、日本特産。

感染症 VOL.28 No.6より

サビイロクビオレタケ

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サビイロクビオレタケ
Cordyceps ferruginosa Y.Kobayasi et D.Shimizu

発生地:青森県・十和田
採集年月日:Aug.8,2002

鞘翅目Coleopteraの幼虫に寄生するクビオレ型の虫草菌で、子実体の先 端は白色の角状に屈曲している。

本種はゴミムシダマシ科の幼虫に寄生したもので子実体が2本、結実部は肥厚し淡黄白色の菌座には赤茶色、埋生の子嚢殻peritheciumの孔口が不 規則に荒く突出している。標準型のサビイロクビオレタケでは結実部が背着性、円盤状で、子嚢殻はサビ色、または赤褐色で埋性、孔口は細かく結実部表面に密 布する。その点で本種は色彩、形態を後者の標準型と異にしている。

昆虫の種によって、棲息環境によって虫草菌の寄生や発生を異にするが、いずれも朽木を生活の根拠とするコメツキムシ科やゴミムシダマシ科の昆虫に寄生 し、菌核をつくる点で共通の朽木生型虫草菌である。

本種の子実体は太針状で高さ3〜4.5cm、柄の太さ2〜3mmで繊維肉質、子嚢殻は卵形600-650×250-300μ、子嚢胞子は細長い糸状で、2 次胞子は短冊状5-7×1μである。

湿度の高い広葉樹林帯、ブナ、ミズナラ、トチノキ、サワグルミ、カツラなどの生い茂る林内の風倒木、朽ち木上に発生する。

人工培養(菌株CY71

感染症 VOL.34 No.5より

ベニイロクチキムシタケ

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ベニイロクチキムシタケ
Cordyceps roseostromata Y. K et D. S

発生地:青森県・十和田
採集年月日:July.26,1988

鞘翅目Coleoptera甲虫類のゴミムシダマシ科Tenebriodaeの 幼虫に寄生する虫草で、朽ち木上に発生する。

甲虫類に寄生する代表的虫草には先に掲載したコガネムシタンポタケがあり、本種は北方系の十和田奥入瀬を中心に発生する朽木生の虫草である。

ブナ、カツラ、クヌギ、ミズナラ、トチノキ等、原生林内の朽ち木上に鮮やかな紅色の子実体stromaを発生させる。

子実体は虫体の各部から2〜10本発生し、朽木中の幼虫と朽木上の子実体とは白い糸状の細い菌糸体で繋がっている。子実体は小型で、結実部は円筒状でふ くらみ、成熟するとやや折れ曲がるのが特徴である。柄の高さは5〜20mm、肉質で美しい鮮紅色を帯びる。

子嚢殻peritheciumは半埋生、洋梨形で、濃い紅色、孔口部は子嚢果ascomaの表面上に突出する。280-300×140-160μ。

子嚢胞子ascosporaは細長い糸状で、太さは3-3.5μ、頭部の径2.5-3μになる。2次胞子sec-sporeは4-5×1μ。

註:写真は1988年、十和田・奥入瀬の渓流沿いの風倒木上に発見したもので、高木森林内の暗がりに心踊る思いで採集したものである。

人工培養(菌株CY113

感染症 VOL.29 No.4より

ホソエノアカクビオレタケ

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ホソエノアカクビオレタケ
Cordyceps rubrostromata Kobayasi

発生地:青森県・十二湖
採集年月日:July.30,1988

鞘翅目Coleopteraの幼虫に寄生するクビオレ型の虫草菌で、子実体の先端は赤 色でツルの嘴状に屈曲しているのが特徴である。フカフカする苔の中に宿主の幼虫があり、4本の赤紅色の子実体が観察された。結実部の子嚢殻 peritheciumは埋生型で、成熟して半埋生から輪郭の明瞭な叢生となる。

標準型のサビイロクビオレタケC.ferruginosa Kobayasi et Shimizuは結実部が背着性、円盤状で、子嚢殻はサビ色、または赤褐色で埋生、孔口は細かく結実部表面に密布する。その点で本種は色彩鮮やかな紅色、 柄は繊細で後者と異にしている。

本種の子実体は細針状で高さ6〜15mm、柄の太さ0.5〜1.0mmで繊維肉質、子嚢殻は卵形400-480×200-280μm。子嚢胞子は細長い糸 状で、2次胞子は短冊状で5〜6×1μmである。

湿度の高い広葉樹林帯、ブナ、ミズナラ、トチノキ、サワグルミ、カツラなどの生い茂る林内の風倒木、朽ち木上、岩の苔上に発生する。

人工培養(菌株CY83

〔追記〕青森県十二湖は白神山系の北端に位置し、ブナなど広葉樹林の原生林に覆われ、清涼な湖水が緑豊かな自然の景観に包まれていた。このような太古の自 然環境の中では、虫草属菌の希有の新発見が期待される。

感染症 VOL.35 No.1より

マヤサンエツキムシタケ

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マヤサンエツキムシタケ(学会未記録種)
Cordyceps sp. nov.

発生地:山形県・摩耶山
採集年月日:Aug.2,1986

鞘翅目Coleoptera、コガネムシ科Scarabaeidaeの 幼虫に寄生する虫草で、本種はスギやヒノキなどの針葉樹を食餌とするスジコガネの幼虫に寄生した虫草菌である。

鞘翅目の昆虫に寄生する虫草菌は鱗翅目以上に多くの種類、世帯を有している虫草菌群である。代表的なものに、先に表紙で紹介したコガネムシの幼虫に寄生 するコガネムシタンポタケCordyceps neovolkiana Kobayasiがあり、他にコメツキ科の幼虫、カミキリムシ科、オサムシ科の幼虫や成虫に寄生する各種の虫草菌を有している。

本種は1986年の夏、山形県の秘境とされ、信仰の山である摩耶山(1,020m)の麓で初めて発見された虫草菌で、摩耶山の地名に因んでマヤサンエツ キムシタケと命名された。

登山道の入口には樹齢100年を越す杉林が連なり、鬱蒼とした茂みにはミドリ濃い玉虫色のコガネムシが木洩日に映える。薄暗い山道の下には水飛沫が立ち のぼる渓流が合流している。殖生相はヤマトリカブト、タニウツギ、トチノキ、サワグルミ、ミズナラ、ホウノキ、ムシカリ、サワシバなどが繁茂している。

子実体stromataは棍棒状、長さ40-65mm、地上部は30-55mm、頭部の子嚢殻部は8-11mm、柄の太さ2.0-1.7mm、基部はやや 細くなる。幼虫の大きさは30×5-7mmである。子実体は淡黄色で頭部はやや茶褐色を呈する。

子嚢殻peritheciaは半裸生型、卵球形で大きさ400-430×200-250μ、子嚢ascusの幅3.8μ、子嚢胞子ascus sporeは冊状形の2次胞子sec.ascospores 2.0-2.5×0.3μとなり空中に飛散させる。

本種の地上部の子実体はイザリア型との二双生で弾力性があり、地下部は徐々に細まり茶褐色に変わる。同一の宿主から完全型と不完全なイザリア型の子実体 が同時に発生している。イザリア型はマヤサンエツキムシタケの異形と思われる。

人工培養(菌株CY158

1998年8月、12年振りに同じ場所を訪れた。ここでも森林の伐採が進み、明るい太陽の下に目的とするマヤサンエツキムシタケの姿は無かった。

感染症 VOL.30 No.2より