同翅亜目

ヨコバエタケ

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ヨコバエタケ (日本特産)
Podonectrioides cicadellidicola Y.K et D.S

発生地:山形県・神室山
採集年月日:Jul.23,1975

同翅亜目Homopteera、ヨコバエ科Deltocephalidas昆虫の羽化または羽化直前の幼虫に寄 生する。

虫草の発生は地生型、朽木生型、気生型と寄生する昆虫の生活圏によって異なり、ヨコバエタケは気生型、山地渓川の広葉樹の葉の裏側に生きていた時の状態 で固着し、発生する。

子実体を欠くが、上向きに立ち上がる腹の尾部先端に、不完全型の淡橙黄色の子座stromaを1〜3個出す。

体全体、菌座の表面に飴色の胞子果を疎らに、不規則に裸生する。胞子果は卵形で370-400×220-280μ、子のうは 150-180×10-15μ、2次胞子35-48×4-5μで長紡錘形、8-12個の隔壁がある。

ヨコバエタケPodonectrioides cicadellidicola Y.K et D.Sの人工培養

1977年、東北薬科大学第二研究所・佐々木健一教授の下で、人工培養の子実体stroma由来のエタノール抽出物について、マウスの Ehrlich sorid tumorに対する抗腫瘍性を検討した。Tumor ratio T/C×100(%)は25mg/kg/day×5で83、50mg/kg/day×5では64で36%にとどまった。

1978年4月、日本薬学会、岡山大会にてウスキヨコバエタケの抗腫瘍性と共に発表した。

感染症 VOL.27 No.4より

ウンカハリタケ

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ウンカハリタケ
Cordyceps sp.

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Aug.18,1977

同翅亜目Homoptera、コガシラウンカ科のナワコガシラウンカRhotala nawai Matsumuraの成虫に寄生した虫草菌である。奥山のブナ、コナラ、ミズナラ、サワグルミ、トチノキ、カツラ、スギの混じる広葉樹林帯の山地渓畔にて 発見された。

本種は地生型の虫草菌で、宿主である昆虫の胸部より発生し、地上部の子実体の高さは6cm、太針型の円柱状で、やや硬い繊維肉質、淡黄赤褐色であった。 柄の先端は細まり、太さ0.8-1mm、上半部に結実部を造り、ラセン状に赤褐色の子嚢殻peritheciumを発生させる。

子嚢殻は裸生、卵形300-350×225-250μ、子嚢胞子は130×1-1.5μであった。

1949年、秩父大血川で最初に発見記録され、1977年に本種の発見、のち1981年には故渡部正一氏によって山形県山刀伐峠で採集されている。発生 は極めて稀、日本特産。

〔追記〕宿主であるコガシラウンカは主に深山渓畔に生息する昆虫で、本種の発生地は人工による深山の自然林伐採と共に自然環境が破壊され、4例目の発見は 未だ実現されていない。

感染症 VOL.36 No.1より

アワフキムシタケ

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アワフキムシタケ(中国名:吹沫(スイマツ)虫草)
Cordyceps tricentri Yasuda


発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.28,1978

同翅亜目Homoptera、アワフキムシ科Cercopidaeの 昆虫に感染、寄生する地生型の虫草菌で、枯葉堆積中に埋もれるアワフキムシ胸部より発生し、ミミカキ型の子実体を地上部に現す。

本種はモンキアワフキ虫に寄生する虫草で、一般にアシ(葦)、ススキなどの生える小川、河川近くの広葉樹林帯に発生する。

地上部の子実体は単立、5〜15cm、橙黄色で、頂部に肉質の長楕円形、または紡錘形の結実部を造る。大きさ6-10×1mm、先端は尖り、子嚢殻 peritheciumの口縁部が乳頭状に突起し、表面に密布する。

柄は糸状の繊維質、太さは0.35-0.5mm、平滑で、全体的に淡橙黄色である。

子嚢殻は斜完埋生、長い細口瓶型、700-800×50-200μで、子嚢ascusは350×7μ、子嚢頭部の幅6-7μ、高さは5-6.3μ。二次 胞子sec-sporeは9-10×1.2-1.5μの大きさで、長紡錘形に分裂して空中に飛散する。

日本、台湾、中国に分布する。

人工培養

感染症 VOL.35 No.6より

ハリガタカイガラムシタケ

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ハリガタカイガラムシタケ(TY-245)
Cordyceps sp.(harigata-kaigaramushitake)

発生地:山形県最上郡釜渕
採集年月日:Aug.21,1978

発見当初、ヤハギカイガラムシタケともいわれ、学会未記録、カイガラムシ科Coccidaeの成虫に寄生し、山地林内の河畔、トチ、 ムシカリ、タニウツギの木に発生、気生型の虫草である。

カイガラムシの背面に3〜15本の白色美麗な針型の子実体carpaを簇生する。

子実体は高さ4〜5mm、太さ0.5〜1.0mm、淡橙白色、頭部に結実部を着衣型につくり、胞子果peritheciumは初め埋生型、後に成熟して 卵形の裸生型となる。子のう胞子は130〜180×2〜3μ、2次胞子に分裂しない。

柄は繊維肉質、やや強靱で円柱形、先端に向かって細まり針型となる。

1978年、山形県高坂ダムのトチの枝下に矢萩禮美子氏が発見採集、その後県内の摩耶山、山刃峠の他、舞鶴市郊外で見出され、極めて稀に発生する。

人工培養

感染症 VOL.27 No.5より

サキブトカイガラタケ

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サキブトカイガラタケ
Cordyceps yahagiana Y.Kobayasi et D.Shimizu

発生地:山形県最上郡釜渕
採集年月日:July.15,1978

同翅亜目Homoptera、カイガラムシ科Coccidaeの比 較的大型のカイガラムシに寄生する冬虫夏草属菌で、子実体の頂部はバット状に膨れ上がり、先端部に子嚢殻peritheciumを発生させるのが特徴であ る。

カイガラムシに寄生する虫草としても最も基本的な種は1969年、山形県川西町玉庭にて初めて発見されたカイガラムシツブタケC.coccidiicola Kobayasi et Shimizuがあり、また、発見当初ヤハギカイガラムシタケと命名されたハリガタカイガラムシタケCordyceps sp.などがある。

本種は気生型の虫草で、湿度の高い渓谷、流畔のタニウツギの枝幹に着床していて、追培養によって子嚢殻を形成させるのに成功した虫草菌である。

子実体の高さ4.5〜5.5mm、頂部の径0.8mm、基部の太さ0.2〜0.4mm、色は淡黄褐色で、繊維肉質の子実体を7本叢生させる。頂部 の結実部には洋梨型、淡紅色の子嚢殻を裸生型に発生させる。二次胞子sec-sporeは6-7×3μで空中に飛散、世代を繰り返す。

日本特産。人工培養

〔追記〕追培養について:野外から採取された未熟sterileの虫草菌を保湿度の高い(岩ゴケなど)容器内で、子嚢殻が形成するまで人工的に管理培養す る方法。
本種は発見者の私の名に因んでCordyceps yahagianaと命名された。

感染症 VOL.34 No.3より

カイガラムシツブタケ

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カイガラムシツブタケ
Cordyceps coccidiicola Y.kobayashi et D.Shimizu

発生地:山形県最上郡釜淵
採集年月日:Aug.24,1975

同翅亜目Homoptera、カイガラムシ科Coccidaeの昆 虫に感染、寄生する虫草菌で、丸味のある比較的大きめのカイガラムシである宿主に子実体を発生させる。

本種はカイガラムシに寄生する虫草としては最も基本的な種類で、1969年、山形県川西町玉庭にて初めて見出されて以来、ハリガタカイガラムシタケCordyceps sp.、サキブトカイガラムシタケC.yahagiana Kobayashi et Shimizu、イリオモテカイガラムシタケ

Kobayashi et Shimizu などのカイガラムシなどに寄生する虫草が日本国内で発見されている。

小さい寄生型の虫草で湿度の高い渓谷、流畔のタニウツギ、オオカメノキ、トチノキ、エゾアジサイの枝幹に着床し発生する。

子実体は高さ3〜6mm、3〜10本を叢生、角状で肉質、上部に淡桃灰色の結実部をつくり、基部は白色、平滑で、太さ0.7〜1.5mmになる。結実部 は淡褐色の半埋生型で、子嚢殻peritheciumの先端を粒点状に密布させる。子嚢殻は卵形で、大きさ250-270×150-160μ。

子嚢ascocarpiumは130-150×8.5-10μ、子嚢胞子ascosporeは細長い糸状で75-95×3-3.5μ、二次胞子sec- sporeには分裂しない。

日本特産。

人工培養

〔追記〕外国産にカイガラムシタケC.clavulata(Sch.)Ellis が知られており、子実体は極めて小さく高さ1-2.2mm、結実部はバチ型のタンポ状、色は淡い暗紫褐色の肉質で、明らかに本種とは形態を別にする。北ア メリカ、ヨーロッパ産。

感染症 VOL.32 No.2より

カイガラムシキイロツブタケ

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カイガラムシキイロツブタケ
Torrubiella superficialis Y.Kobayashi et D.Shimizu

発生地:山形県最上郡神室山
採集年月日:Aug.21,1978

山地林内湖畔のトチ、ムシカリ、タニウツギなどの木に棲息するカイガラムシ科Coccidaeの 成虫に寄生する虫草である。
カイガラムシの背面上に直接、美麗な透明感のあるシトロン・イエローの子嚢殻peritheciumを不規則に発生させる。

本種は形態学的分類から子実体carpaをつくらず、トルビエラ型Torrubiellaと いい、宿主Hostの背面上に菌糸体Myceliumを形成、その全面に直接、子嚢殻を着床、結実させる。(写真)

虫草菌は形態的に大きく三つに区別される。棍棒状、樹枝状、タンポ状、ハナヤスリ状、針型状などの子実体(キノコ)をつくるものをコルジセップスCordyceps型、 クモやカイガラムシなどの虫体表面に直接、子嚢殻をつくるトルビエラTorrubiella型、そして、ヨコバエタケ、ウスキヨコバエ タケのように子座Stromaが盛り上がり、虫体の尾部を立ちあげるポドネクテリアPodonecteria型の3種類に分類される。

子嚢殻は典型的洋梨型の裸生型で、大きさ500-600×180-250μ。口部は太く短い、子嚢胞子Ascospore4-6μ、二次胞子 Sec.ascosporeは5-5×1.5μで、空中に飛散させながら世代を繰り返している。

1978年8月、山形県は神室山(1,365m)の湿度の高い登山道入口でタニウツギの枝下に発見した。近年、そこにはダムが建設され湖底に埋没した。 以来、ここでは生態系が破壊されたため、カイガラムシキイロツブタケの発見は記録されていない。

人工培養

感染症 VOL.30 No.4より

トビシマセミタケ

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トビシマセミタケ
Cordyceps ramosopulvinata Y.Kobayashi et D.Shimizu

発生地:山形県・鶴岡
採集年月日:july.30,1981

半翅目Hemiptera。セミ科Cicadidaeの幼虫 に寄生する虫草で、宿主となるセミにはヒグラシ、アブラゼミ、ミンミンゼミなどがある。

半翅目のセミに寄生する類似の虫草菌には、他に西表島で採集されたカンザシセミタケC.kanzashiana、 ヒメハルゼミタケC.polycephalaが近似種として知られている。

本種は1980年の夏、日本海は山形県沖の飛島にて、採集の第一人者・渡辺正一氏によって初めて発見された虫草菌で、トビシマセミタケと命名された。

飛島は対馬暖流が流れ、温帯性の植物が多く、飛島独自の生態系をつくっている。ことに北限とするクスノキ科タブノキの原生林が海岸の岸壁に繁茂し、海流の 湿度と調和してトビシマセミタケの発生に少なからぬ影響を与えている。

子実体stromataの柄の長さ2.0〜9.5cmになり、太さは約1.0〜2.0mm、頂部は枝分かれして、首折れ型の結実部をつくる。球状か楕円状 に結実し、ときに突き抜き型に先端をわずかに表す。柄の色は黄白色か淡黄土色、弾力性ある革質でかたい。

子のう殻peritheciumは洋梨形で半埋性、結実部に密布する。大きさ750-925×275-300μ、子のうascusの太さ3.5-5μ、 頭部の径3-5μ、二次胞子sec.sporeは3×1μで、短冊状に両端が裁断される。

当初、山形県庄内地方を中心に発見されたが、日本海沿岸を南下して全国的に発見されるようになった。発生は希、日本特産。

越年生でホストである虫体にカロリーが残っていると、越年して翌年に旧子実体から枝分かれして新しい結実部をつくる。

人工培養

感染症 VOL.31 No.3より

ツブノセミタケ

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ツブノセミタケ
Cordyceps prolifica Y.Kobayashi

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:July.30,1976

同翅亜目Homoptera、セミ科Cicadidaeの幼虫に寄 生する虫草で、本種はヒグラシTanna japonensis Distanの幼虫に寄生したものである。

同翅亜目のセミ科昆虫に寄生する虫草菌は鱗翅目以上に大型で、宿主である昆虫と寄生菌の子実体であるキノコが一体となり、美しい造形美を表現する虫草菌 は他にない。

代表的なものに先に表紙で紹介したセミの幼虫に寄生するオオセミタケCordyceps heteropoda Y.Kobayashiが挙げられる。一般に虫草採集の醍醐味は、地中の昆虫を掘り当てる時の興味津々たる心境にある。ホストである地中のセミが深いほど 柄が細くなり、老朽とともに切れやすく、掘り出すのに苦労する。切断すると菌核となっている地中の昆虫を探し出すことは不可能に近い。

虫草は冬には地中にあって虫として活動し、夏には草(キノコ)に変身して地上に姿を現す。

古代中国の神仙思想において、天変地異の自然現象に対する畏敬の念の中に、虫草の風変わりな変身にも摩訶不思議な怪奇現象として捉えたに違いない。

本種は子実体の長さ35cmに及び、樹齢50年以上の杉とコナラの混交林中で、約2時間かけて採集された。

子実体storomataは針型状でセミの頭部、胸部より単立に発生し、まれに枝分かれ状に越年の子実体が枯れ残る。地上部は弾力性ある肉質で、頭部は ときに偏平、黄褐色でツブタケ型に裸生の子嚢殻peritheciaを不規則に密布する。

地上部の長さ1.5〜3.5cm、地下部を含めて柄の長さ5.0〜35cm、基部は径1.5mm、褐色の弾力性ある繊維様菌糸体からなる。

子嚢殻は卵形または楕円形、550-580×300-310μで淡褐色、子嚢胞子ascus sporeは細長い糸状で400×5-6μ。二次胞子は1.5×1μ。

日本の北海道から最南端の西表島にいたる全土の山地林内に発生するがやや稀である。熱帯雨林のニューギニアにも発生の記録がある。

人工培養

感染症 VOL.30 No.3より

ツクツクボウシタケ

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ツクツクボウシタケ
Isaria sinclairii(Berk.)Lloyd

発生地:宮城県・青葉山
採集年月日:Aug.2,1998

同翅亜目Homoptera、セミ科Cicadidaeの幼虫に寄生する虫草で、ツクツクボウシ(蝉)の幼虫の頭部、または口部から子実体を発生させる。

セミ科に寄生する虫草菌の中で唯一、不完全のイザリア型Isariaの分生胞子で世代を繰り返している虫草である。

他に同じ宿主であるツクツクボウシの蝉に寄生する完全世代のツクツクボウシセミタケCordyceps sinclairii Kobayashiがあり、同一虫体に子嚢殻peritheciumを持ったコルジセップス型の子実体と、イザリア型の子実体が混成して発生するツクツク ボウシセミタケが確認されている。

子実体stromataの頭部は竹箒状に枝分かれし、高さ2.2〜3cm、頭部に白色、粉状の分生胞子conidio sporeを発生させる。顕微鏡観察下、胞子の形状は卵形、楕円形、紡錘形、大きさは5-9×2-3μである。柄は円柱形、ときに偏平状で、淡黄土色。基 部は灰白色で菌糸体が虫体のセミ全体を包む。

分布:日本、中国、南アメリカ、スリランカ、マダガスカル、ニュージーランドに発生。日本では太平洋側の宮城県から沖縄本島にまで分布が広がる。

人工培養 ヤハギ培地使用

〔追記〕1997年、摂南大学薬学部教授、日本生薬学会の会長・藤田哲朗先生は、台湾産ツクツクボウシタケIsaria sinclairiiから免疫抑制物質ISP-1を単離し、Cyclosporin-Aより強い免疫抑制作用のあるミリオシンmyriocinであること を実証した。これにより臓器移植がより容易に行われることが期待される。

感染症 VOL.30 No.5より

セミタケ(不稔型)

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セミタケ(不稔型)
Cordyceps sp.(Cicadidae sterilis fungus)

発生地:山形県舟形町
採集年月日:Aug.10,1980

同翅亜目Homoptera、セミ科Cicadidaeのセミ (蝉)の幼虫に感染、寄生した冬虫夏草属菌で、地中に生息するセミ虫体の口部、背部から叢状に多数の太針状の子実体を発生させる。

本種はセミに寄生する冬虫夏草属菌としては異例とされる子実体の発生形態で、セミ寄生の子実体は棍棒状、タンポ状、およびツブノセミタケCordyceps prolificaのような単一太針状の弾力性ある子実体をつくるのが一般的形態である。

本種の場合、多量の降雨量のためセミタケ菌に感染されていた土中のセミ幼虫が地表に押し出され、露出したもので、セミ虫体内部に浸食充満した菌糸体が虫 体表皮のキチン質、ケラチン質外皮を突き破って不規則に多数の子実体を叢生させたものである。

1997年沖縄県、西表島においてリュウキュウクマゼミの成虫に本種と同じ不棯型のイリオモテクマゼミタケCordyceps sp.(iriomote-kumazemitake)を宇梶清一氏によって発見され、記録されている。

いずれも、追培養を試みたが不棯で終わり、子嚢殻peritheciumを有する真性の完全型冬虫夏草属菌にはなれなかった。以来、これに類するセミ寄 生の冬虫夏草属菌の発見は記録されていない。

子実体の柄の高さ2-2.5cm、肉質で弾力性があり、淡黄褐色、太さ1.5-3.0mm、頂部にはわずかに不棯型の結実部(不規則の菌塊)をつくる。 結実部の顕微鏡観察でも子嚢菌特有の子嚢殻を確認できなかった。

日本特産。発生は極めて稀。

感染症vol.36 No4より

セミタケ

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セミタケ(中国名:蝉花)
Cordyceps sobolifera (Hill.) Berk. et Br.


発生地:京都・洛北
採集年月日:July.26,1980

同翅亜目Homoptera、カイガラムシ科Coccidaeの昆 虫に感染、寄生する虫草菌で、地中に生息するニイニイゼミの幼虫頭部より棍棒状の子実体を発生させる。

本種はセミ(蝉)に寄生する虫草としては最も基本的な種類で、1763年、Hill.により学名Clavaria soboliferaセミタケとして命名された。

地上部の子実体であるキノコと、宿主である地下部のセミが渾然一体をなして形成する姿は、虫草の典型的な形態とされてきた。

本種の子実体は単一の棍棒状で高さ7cm、先端部はやや太く約10mm、基部に向かい細まり3mmになる。色彩は全体的に淡赤褐色で肉質、上部の結実部 には埋生型の子嚢殻perithecium口縁部が粒点状に密布する。

基部(セミの頭部)にはコブ状の盛り上がりが見られ、内部には紡錘形で無色、平滑な分生胞子を形成する。この部分より成熟とともに短枝の柄を発生させる。

子嚢殻は細口瓶形で、大きさ500-600×220-260μ。子嚢ascocarpiumは400-470×5.6-6.3μ、子嚢胞子 ascosporeは細長い糸状で、二次胞子6-12×1-1.5μに分裂する。

産地:日本、南北アメリカ、オーストラリア、中国、ニュージーランド、スリランカ、マダガスカル

人工培養

〔追記〕ヨーロッパには発生の記録はない。日本では関東以南に発生し、栃木県都賀郡以北の東北地方に は未だ発生の記録はない。地生型で、初夏から夏の盛りにかけ庭園、神社の境内、お寺や、低地山野の林叢内に発生する。薬効では、セミに寄生するイザリア形 の虫草ツクツクボウシタケには免疫抑制作用の活性成分が確認されており、一般にセミ寄生の虫草には免疫賦活作用、制癌作用は期待できないものと思われる。 中葯では痙攣を解き、風熱を散じ、翳障を退け、疹を透す、とある。小児の引きつけ、咳嗽、喉頭の腫れ、かすみ目など目の疾病、痘瘡、蕁麻疹などアレルギー 性の疾患に他の方剤とともに用いられてきた。

感染症 VOL.32 No.3より

シロオオセミタケ

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シロオオセミタケ(仮名・学会未登録種)
Cordyceps sp. nov

発生地:青森県・十和田
採集年月日:Aug.20,1993

同翅亜目Homoptera、セミ科Cicadidaeの幼虫 に寄生する虫草で、本種は大形のエゾゼミTibicen japonicus Katoの幼虫に寄生した虫草菌である。子実体stromaの長さ19.2cm、地上部6cm、頭部の大きさ縦11mm、横7.0mm、柄の太さ 4.0mm、基部は細くなり1.2mmになる。

セミに寄生する代表的な虫草菌にセミタケCordyceps sobolifera(Hill.)B.et Br.があり、古来、中国では蝉茸として珍重され、小児のひきつけ、夜泣き、咳嗽、痙攣、湿疹を癒すのに用いられてきた。形態的に、子実体は棍棒状で、大 きさも約2分の1に満たない。関西を中心に発生し、栃木県以北では未だ記録されていない。また、東北を中心に発生するオオセミタケCordyceps heteropoda Kobayashiは形態的にもタンポ状、頭部の色は淡紅褐色で、柄は淡色、本種と色合を異にする。

本種の子実体の地上部には二双生、白色、肉質で弾力性があり、地下部は徐々に細まり茶褐色に変わる。

子嚢殻peritheciumは完埋生で淡褐色、孔口は細口瓶形で、タンポ状頭部の表面に粒点状に密布する。大きさ580-650×280-320μ。

子嚢ascisの大きさ125×3-5μ、頭部は3×3μで、二次胞子は柵状形、大きさは5.0-7.5×2μになる。

人工培養

夕日に染まる十和田湖畔の広葉樹林帯で発見したもので、2例目は未だ見つかっていない。例年、同じ 近辺を探索しているが、近年、林道が切り開かれて、自然環境の生態系が破壊され、種の絶滅に帰したものと思われる。

感染症 VOL.29 No.6より

オオセミタケ

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オオセミタケ
Cordyceps heteropoda Y.Kobayashi


発生地:山形県最上郡釜渕
採集年月日:JUly.20,1979

同翅亜目Homopteraのセミ科Cicadidaeに寄生する 虫草で、エゾハルゼミ、コエゾゼミ、アブラゼミ、ヒグラシの幼虫の頭部、または背面から発生する。

現在、約350種類に及ぶ虫草(日本冬虫夏草)の中で、形態的に宿主である昆虫と子実体であるキノコが一体化し、最も典型的姿を形作る虫草はセミタケで あり、自然界の創造性と偉容を誇る虫草は他にない。

中国の薬用菌類として虫草に代表されるものに冬虫夏草C.Sinensis(Berk)Sacc. があり、他に虫草の仲間で代表される蝉花(セミタケ)C.Sobolifera(Hill.)Berk.が伝えられている。薬性は寒、 薬味は甘、無毒。痙攣を解き、風熱を散じ、疹を透すとあり、古来、薬用菌類の一つとして汎用されてきた。

日本にてもセミタケは関西地方を中心に、栃木県以南に発生する。しかし東北地方にはオオセミタケが一般的に多発し、基本種であるセミタケの発生は未だみ ていない。地域性により北は北海道のアイヌセミタケから、南は西表島のイリオモテセミタケに至るまで種特異性ある各種のセミタケが広く分布する。

本種のオオセミタケはタンポ型、子実体stromaは円形または楕円形の頭部と円柱状の柄からなり、根元は細くくびれ、やや硬い肉質の3つの部分からな る。

地上部は高さ10〜12cm、径3〜8mm、平滑、淡黄褐色、埋生部分は朱褐色となる。結実部(頭部)は頂生、大きさは7-9×6-7mm、淡褐色、子 嚢殻perithecium(埋生型)の先端が表面に粒点状に密布する。

子嚢果ascocarpiumは細口瓶形610-660×200-215μ、子嚢ascus250-300×5-7μ。子嚢の頭部は偏球形、 5.5-6.5μ。2次胞子sec.ascospores、6-8×1μ。

発生環境は落葉樹、照葉樹と針葉樹の混交林内に発生し、高温多湿の6〜8月にかけて最盛期である。日本の他はアフリカのコンゴ地方で発見されている。

人工培養

感染症 VOL.28 No.1より

エニワセミタケ

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エニワセミタケ
Cordyceps sp nov. D.Shimizu

発生地:北海道・恵庭
採集年月日:Aug.28,2003

同翅亜目Homoptera。セミ科Cicadidaeのセミの幼 虫に寄生する地中生の虫草菌で、幼虫の頭部から子実体を単一に発生し、ときに頂部で枝分れするものもある。先端は突き抜き型となり、肥厚した結実部を形成 し、半埋生の子嚢殻peritheciumを不規則に密布させる。

本種の子実体の柄は円柱状で、地下部は地中の埋石、木根のため中途で屈曲しているが、弾力性ある肉質で折れない。宿主からの長さ約11cm、太さ3〜 5mm。地上部の高さ2.5cm、枯葉の間から発生し、色は淡黄色を帯びる。地下部は茶褐色から基部へ向かって濃い褐色に変わる。

ノムシタケ属Cordycepsのセミに寄生する虫草菌の仲間には、分生胞子型のツク ツクボウシタケを含めて42種を数える。

北は北海道から南は八重山諸島の西表島まで日本列島、セミの生息している地域には種々のセミタケが発生し、今後も新しいセミタケの発見が期待される。

とりわけ、本種のエニワセミタケはトドマツ林内に発生する北方系のセミタケで、青森県以南では未だ発見されていない。

子嚢殻の大きさは350-400×160-200μm。子嚢の幅1.8μmで、長楕円形または卵形。子嚢殻の口縁部は淡黄色の円形で結実部に密布する。

日本固有種で現在では北海道のみに発生する。

学会未登録種。人工培養
 

感染症 VOL.34 No.3より

ウスイロセミタケ

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ウスイロセミタケ
Cordyceps imagamiana Y.Kobayashi et D.shimizu

発生地:山形県・今神
採集年月日:Aug.30,1980

同翅亜目Homoptera。セミ科Cicadidaeエゾハルゼ ミの幼虫に寄生する虫草菌である。

半翅目のエゾハルゼミに寄生する虫草菌にはエゾハルゼミタケC.longissima Kobayashiがあり、類似のセミタケにオリーブ色を呈したウメムラセミタケC.paradoxa Kobayashiなどがある。

本種は1980年の夏、最上川船下りで有名な古口町を流れる最上川の支流、角川の奥地、秘境温泉といわれる今神温泉の山地渓流で発見された。冬期間は雪 のため閉鎖され、近くに神秘を湛えたお池がブナの原生林の中に静かなたたずまいをつくっている。

子実体は単一、棍棒状で長さ90mm、柄部は30mm、円柱形で太さは約1.5〜2.0mmになり、平滑、皮膚を欠く。頂部は長楕円形、淡黄褐色。子嚢 殻peritheciumは埋生で卵形450-550×250-275μ、口縁を僅かに突出する。まれに子嚢殻の細口瓶形も認められる。

子嚢ascusの太さ7μ、頭部の径4μ。2次胞子sec-sporeは3-4×1.5μで短冊状に両端が裁断される。

ブナ林内の沢地にヒノキアスナロ(青森ヒバ)の大木があり、その根元で採取された。

当初、同地域では1個体のみの発見であり、新種としては同定されなかった。後に冬虫夏草の第一人者、清水大典、小林義雄両先生の鑑定により新種として登 録された。発生は稀。日本特産。

人工培養
 

感染症 VOL.33 No.6より

イリオモテセミタケ

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イリオモテセミタケ
Cordyceps pseudolongissima Y.K et D.S

発生地:西表島
採集年月日:Aug.10,1977

同翅亜目Homoptera。セミ科Cicadidaeの幼虫に寄生する虫草で、八重山群島の最南端に位置する西表島の亜熱帯雨林内に発生する。
世界で350種に及ぶ虫草の中で、セミに寄生する虫草ほど、宿主である虫体と子実体であるキノコとが渾然一体となり、調和のとれた自然の造形美を作り出しているものは他に類例を見ない。
虫草の中で虫として地中にあり、夏に草と化して地上に姿を現す最も代表的な虫草属菌の一つといっても過言ではない。
子実体stromaは1個、セミ幼虫の頭部より生じ、円柱形、長さ8mm、やや硬い肉質、頂部に赤褐色の胞子果叢を形成し、柄の基部は革質で淡褐色で、捩れる。胞子果peritheciumは埋生型で、僅かに突出、長楕円形で粒点状に密布する。

大きさ470-500×170-270μ、子嚢ascisの太さ4μ、子のう頭部の径3μ、2次胞子8-11×1μ。

人工培養

本菌の不完全型Isariaに分生胞子Conidiosporeで世代を繰り返すイリオモテハナゼミタケ(西表島産)がある。

註:写真はイリオモテセミタケの採集現場写真。地下部の宿主であるセミを掘り起こしたもので、セミ虫体の足の部分から綿毛状の菌糸体が観察される。

感染症 VOL.29 No.3より