2010年4月アーカイブ

2008年4月、山形県鶴岡市在住のクワガタムシ収集家のブログに不思議な写真が掲載されていました。黒い昆虫に日本冬虫夏草が寄生し、子実体を発 生させている写真でした。早速連絡を取り鶴岡市まで行き、目にしたのは全長5cmほどのヒメオオクワガタ(オス)に寄生した日本冬虫夏草でした。

日本冬虫夏草がクワガタムシに寄生したという事例は今までに報告されたことはなく、とても貴重なものであったため譲り受けました。さらに成長を観察すると42日後には子実体の先端が枝分かれし、白い粉状の分生子が生じました。

次に生じた分生子を寒天培地に接種して成長を観察すると、接種から60日後にはヒメオオクワガタから発生したものと同様の子実体と分生子が発生しました。

この一連の観察は2009年5月日本菌学会会報(第50巻 第1号)に掲載されました。

 

世界に唯一のクワガタムシタケ(仮名)標本公開展示

クワガタムシタケ(仮名)液体標本は東北大学植物園の常設展示「矢萩コレクション」にてご覧いただけます。また夏には園内散策路に日本冬虫夏草の一種ツ クツクボウシタケが発生します。ぜひ「日本冬虫夏草の不思議な世界」に触れてみてください。

日本冬虫夏草とは一体どんなものなのでしょうか?その実体を目にする機会はあまりないと思います。『虫草図鑑』では貴重な写真、及び矢萩信夫の解説で不思 議な虫草(日本冬虫夏草)の世界をご紹介してまいります。
また東北大学大学院理学研究科附属植物園(東北大学植物園)、及び理学部自然史標本館では当研究所寄贈の日本冬虫夏草の標本が「矢萩コレクション」として 展示されております。

東北大学植物園に展示してある日本冬虫夏草の標本は、長年収集したうちの86点で、種類は71種類。中には青葉山で見つけたものもあります。寄生する寄主 は様々で、ハチやトンボ、アリ、セミの幼虫やガのさなぎ、クモなど。また土の中にいるツチダンゴという菌にも寄生し、子実体は寄主ごとにそれぞれ形の違う ものを発生させます。その寄主と子実体が一体となった姿の見事な造形美に心を奪われ、現在に至るまで採集、研究を続けてまいりました。矢萩コレクションを ご覧いただいて、日本冬虫夏草の不思議な世界に興味を持っていただければ幸いです。

東北大学植物園ホームページ